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2011年3月11日の東日本大震災で「コストコ多摩境店」の駐車場スロープが崩落、2人が死亡した事故は、現在も建築紛争が続いている。民事訴訟の1審判決を2回に分けて解説する。(日経アーキテクチュア)
震度5程度の揺れで駐車場のスロープが崩落、下敷きになった2人が死亡──。東日本大震災における「コストコ多摩境店」(東京都町田市)の痛ましい事故は、今も記憶に新しい。1人の構造設計事務所代表者が刑事訴追を受け、1審では有罪となったものの、2審で逆転無罪となったのは日経アーキテクチュアでも過去に詳報されたところだ〔写真1〕。
今回取り上げるのは、この事故で生じた損害を巡る民事訴訟の1審判決だ。原告は店舗所有者の米コストコの日本法人と保険契約を締結していた欧米の保険会社2社で、請求総額は約12億5000万円に上った。
被告側は、設計を統括し確認申請などを実施した意匠設計事務所、構造設計の再委託を受けた構造設計事務所A、そしてコストコ側から特命を受けて構造の変更設計を手掛けた構造設計事務所B、施工を元請けした大手建設会社だ。
なお刑事事件で東京地方検察庁立川支部は意匠設計事務所、構造設計事務所A、施工者を不起訴処分とし、構造設計事務所Bのみ起訴した。民事訴訟で改めて関係者の責任が問われた格好だ〔図1〕。