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構造の違いが最大原因と認定

 判決はまず崩落原因として、(1)建物本体とスロープ部分の変位差が大きくなったこと、(2)建物本体とスロープ部分の接合がぜい弱だったこと、の2つを挙げ、特に前者(変位差)の影響が大きいと断じている。変位差が大きいので、「仮に本体とスロープ部分が床でつながっていたとしても、いずれにせよスロープは崩落していた」と認定した。これにより、損害に直結する設計瑕疵(かし)の存在が定まった。

 問題は設計を担った各社に過失があったかだ。

 まず構造設計事務所Bから見ていこう。Bの代表者は刑事事件で唯一、罪に問われていた。東京地裁立川支部は刑事訴訟1審において、「もともと床がつながっていなかった原設計を、床がつながった設計に変更するなら、その旨は意匠設計事務所に伝えなければならない」として業務上過失致死罪を成立させた。

 だが2審において、「変更前の原設計図は『建物本体とスロープ部分の床がつながっている設計』と読めるものだった」と事実認定が覆り、危険は予見できなかったとして無罪となった経緯がある。

刑事は無罪でも「過失あり」

 今回の民事1審判決は主に調停委員の意見書に基づき、事故原因についてさらに突っ込んだ検討がされている。判決はBについて、本体部分とスロープ部分を異なる構造とし、さらに柱脚部分を在来工法に変更する設計を行った点を疑問視。変更時に「接合部が変位差に耐えられるかを構造計算していなかった」という過失があると認定した。

 また工事監理において、自らの設計意図通りに床スラブが一体化されているかを直接確認する義務を怠った点も「過失あり」とした。

 スロープ部分だけをブレース構造としたのは、構造設計事務所Aの指摘によるものだった。従って、Aも過失を免れ得ない。判決はAについて、本体部分とスロープ部分が異なる構造となった際、変位差が増大することは専門家として予見できたはずだ、と指摘。工事監理においても確認義務があったとして過失を認定した。