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発注者にも4割の責任

 統括した意匠設計事務所の過失も問われた。判決は「構造設計の調整を行う立場にあったところ、接合方法について確認を怠り、両者を交えて協議する機会も設けなかった」として過失を認定した。

 唯一、責任追及を免れたのが施工者だ。判決は「設計図書通りに施工している」として、過失なしとした。

 原告2社が請求を認められた額は、過失相殺分4割を差し引いた計約7億円。判決はこれを設計者3者が負担すべきだとした〔図56〕。

〔図5〕保険会社2社による請求のうち計約7億円を認容
〔図5〕保険会社2社による請求のうち計約7億円を認容
1審が設計事務所3社へ支払いを命じた金額。計約7億円の高額賠償となった(資料:判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)
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〔図6〕「調整を怠った」と意匠設計事務所の過失も認定
〔図6〕「調整を怠った」と意匠設計事務所の過失も認定
(資料:判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 スロープの再築費用など共同不法行為に基づく欧州保険会社の請求分は3社の連帯責任となった。一方、被害者遺族への補償費用など米国保険会社の求償分では、構造設計事務所Bが最も高額な請求を受けた。約3000万円(過失相殺前の認容額の25%)を支払うようBに命じている。過失の大きさが反映されたといえる。

 裁判において調停委員の意見書には「ラーメン構造とブレース構造のどちらかに統一していたら、スロープは崩落しなかったのではないか」とある。複数の設計者が参加するプロジェクトにもかかわらず、情報共有が十分に図られなかったことが真の原因だったのではないか。次回は原告2社が4割もの過失相殺を受けた理由、発注者の過失を掘り下げる。

講師:富田 裕(とみた ゆう)
講師:富田 裕(とみた ゆう) 1989年に東京大学法学部卒業後、建設省(現・国土交通省)入省。96年に同大学院建築学専攻修了後、磯崎新アトリエ入社。97年富田裕建築設計事務所設立。神楽坂キーストーン法律事務所を経て、2012年TMI総合法律事務所入社。弁護士、一級建築士(写真:TMI総合法律事務所)