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未曽有の資材高騰が、建築プロジェクトに大きな影響を与えている。では、欧米の先進国の状況はどうだろうか。日本と欧米の建築費を比較しながら、日本の建設業界が抱える構造的な課題を浮き彫りにする。(日経アーキテクチュア)

 建設物価調査会によると、2022年9月の鉄骨(S)造事務所の建築費指数は、前年同月比9.6%増だった。原燃料などの価格上昇に大幅な円安が加わって資材価格が高騰。建築費上昇の主因となっている。22年の春先から、建設会社はコスト上昇分を価格に転嫁する動きを強めている。

 欧米の状況はどうかというと、建築費の上昇率は日本よりもさらに大きい。米国は前年同月比23.2%増だった(9月の値)。欧米では、日本以上に原材料価格高騰の影響を大きく受けており、資材価格の上昇率がおしなべて高い。

 日本において、9月の建設資材物価指数(建築部門)は前年同月比11.4%増。これに対して米国は同19.3%増、英国は同16.7%増という高い上昇率を示している。さらに米国では、資材高騰だけでなく、人手不足を背景とした労務費の高騰も建築費の上昇に拍車をかけている。

 S造20階建てオフィスビルの建築費(2022年10月時点)を比較すると、東京の建築費は1m2当たり3553ドル(約51.5万円、1ドル=145円)。一方、米ニューヨークは同5867ドル(約85.1万円)。英ロンドンは同4263ドル(約61.8万円)で、東京を大きく超える水準であることが分かる〔図1〕。

〔図1〕約30年間で米国に大差を付けられた日本の建設業界
〔図1〕約30年間で米国に大差を付けられた日本の建設業界
(資料:サトウファシリティーズコンサルタンツ)
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東京とニューヨークが逆転

 実は、今から約30年前の1990年、東京の建築費は世界の主要都市で最も高い水準にあった。当時の東京におけるS造20階建てオフィスビルの建築費は1m2当たり2450ドル(約35.5万円、1ドル=145円)。米ニューヨークの同1960ドル(約28.4万円)を大きく上回っていたのだ。

 背景として、バブル期に建設投資が急増したことと、それに伴う深刻な人手不足で普通作業員の1日単価が90年に前年比16.3%増になるなど、労務費が高騰したことが挙げられる。しかし、91年以降のバブル崩壊を契機に日本は長期の停滞に陥り、建築費についても約30年間で東京とニューヨークの順位は逆転。大差をつけられてしまった。

 なぜここまで日米で差がついてしまったのか。理由を読み解くカギは「建設投資」と「賃金の伸び」、そして「建設業就業者数」にある。