10月1日に緊急事態宣言が全面解除され、経済活動が再開するなか、建築界に暗い影を落としているのが、建築資材価格の上昇だ。輸入原材料価格の高騰を背景に、鋼材や型枠合板などの値上がりが続いている。(日経アーキテクチュア)

H形鋼、異形棒鋼(鉄筋)、厚鋼板といった代表的な鋼材が2021年に入って急騰し、08年のリーマン・ショック前の高値水準に迫る勢いだ。背景には、主原料である鉄鉱石の価格が、中国の需要拡大などで高騰したことなどがある。21年7月までの1年半の間に41%も上昇した。
H形鋼(200×100)を例に取ると、コロナ禍で需要減となり、20年夏以降は1トン当たり7万4000円に張り付いていたが、21年に入って6カ月連続で高騰した。同年10月には43%増の10万6000円となり、今なお上昇基調で推移している。
異形棒鋼(SD295、D16)も、原料である鉄スクラップ価格の上昇を受けて値上がりしている。鋼材価格の上昇が、超高層ビルのような大型施設の躯体コストに及ぼす影響は大きい。建設計画の行方を左右する要素であるため、今後の動向については要注意だ。
今回の建築資材の値上がりは、鋼材のみならず、木材や合板、電線、ステンレス鋼管、燃料油など広範囲に及んでいる。ウッドショックとアイアンショック、オイルショックという3つの波が同時に襲ってきたような印象だ。
その影響を受けて建設資材物価指数(建築部門)はこの1年間で約14%も上昇した。過去20年で最大の上昇率であった、08年9月のリーマン・ショック直前1年間の約13%を上回っている。