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施工不備問題を巡り、レオパレス21のアパートオーナーが同社に損害賠償を求めた裁判で、請求を棄却する1審判決が下った。理由は旧民法の「除斥期間」だ。改正民法では結論が異なったのだろうか。(日経アーキテクチュア)

レオパレス21の施工不備問題を巡り、問題を告発したアパートオーナーによる民事訴訟の1審判決が下った。レオパレス21側は「施工不備は瑕疵に当たらない。裁判とは関係なく自社側で是正工事は実施する」などと反論した(関連記事:2020年9月24日号ニュース「レオパレス施工不備訴訟、賠償請求を棄却」)
レオパレス21の施工不備問題を巡り、問題を告発したアパートオーナーによる民事訴訟の1審判決が下った。レオパレス21側は「施工不備は瑕疵に当たらない。裁判とは関係なく自社側で是正工事は実施する」などと反論した(関連記事:2020年9月24日号ニュース「レオパレス施工不備訴訟、賠償請求を棄却」)
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 レオパレス21の施工不備問題について、すでにご存じの読者も多いだろう。同社は2018年4月にプレスリリースで問題の存在を認めたが、この原稿を執筆中の20年11月時点でも事態終息の兆しは見えない。

 最も大きな問題点は、同社が建築を手掛けた数多くのアパートで小屋裏の界壁が施工されていなかったことだ。これは建築基準法施行令114条に違反する可能性が高い。

 今回取り上げるのは岐阜市に立つアパート2棟のオーナーが原告となり、同社を相手取って岐阜地方裁判所へ提訴した裁判の1審判決だ。請求額は約2000万円で、原告側が見積もった補修費相当額となる。

 問題の2棟は、レオパレス21が原告と建築工事請負契約を締結、1995年8月に引き渡した建物だ。原告が訴訟を提起した2018年8月時点で築23年だった〔図1〕。

〔図1〕原告の調査を機に大量の建基法違反物件が発覚
〔図1〕原告の調査を機に大量の建基法違反物件が発覚
事件の概要。この裁判の原告による告発が施工不備問題のきっかけになった(資料:取材と判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)
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事実上の門前払いに

 原告側の主張は主に2つ。(1)小屋裏などの施工不良は施工瑕疵(かし)に当たるので、被告には建築工事請負契約が定める瑕疵担保責任に基づき損害賠償する義務がある、(2)アパートは「建物としての基本的安全性」を欠き、「居住者の生命などに対する具体的危険性を生じさせている」ので、同社には不法行為責任もある、というものだ。

 後段の主張部分は、建築行為の不法行為責任を定義した判例(最高裁判所07年7月6日判決、11年7月21日判決)に基づいている。

 一方の被告側は、施工状況など事実関係は「争わない」としたものの、瑕疵や具体的な危険性はないと反論して争った。

 岐阜地裁は20年8月26日、瑕疵の判断に立ち入らず、原告の請求はいずれも「除斥期間の経過により消滅した」と判示して原告の請求を棄却した。事実上の門前払いだ。原告側は控訴した。

 この裁判では、原告と被告は1995年当時の建築工事請負契約において、「瑕疵担保責任期間は引き渡し日から10年間」と定めていた。契約上も瑕疵担保責任が消滅しているのは明白だった。岐阜地裁は、争点を不法行為責任における“除斥期間の起算点”に絞り込んだ。