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那覇市の中心部に、沖縄伝統の織物を表現したコンクリートの外装パネルをまとう劇場が完成した。開放的な内部空間を持ち、質の高い公演などを通じて新しい文化芸術が育まれる創造型劇場を目指す。

南西角から見た全景。雑居ビルや住宅が立て込む那覇市の中心市街地に立つ。沖縄らしい表現と、大型施設のボリューム感を抑えるために、伝統の「首里織」を表現したコンクリート製のパネルをファサードに巡らせた。右側に立ち上がるコンクリート壁の内部には大劇場が入る(写真:小川 重雄)
南西角から見た全景。雑居ビルや住宅が立て込む那覇市の中心市街地に立つ。沖縄らしい表現と、大型施設のボリューム感を抑えるために、伝統の「首里織」を表現したコンクリート製のパネルをファサードに巡らせた。右側に立ち上がるコンクリート壁の内部には大劇場が入る(写真:小川 重雄)
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配置・1階平面図
配置・1階平面図
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 那覇市に2021年10月31日、「那覇文化芸術劇場 なはーと」がオープンした。観光客でにぎわう国際通りに近い那覇市中心部の商業エリアに位置し、周辺には中小の雑居ビルや住宅が立ち並ぶ。児童数の減少による統廃合で14年3月末に閉校した市立久茂地小学校の跡地に、那覇市が建設した。

 建物は鉄骨鉄筋コンクリート造の地上6階建てで、延べ面積は約1万4600m2。中小の建物が立て込む街なかで、ひときわ目を引く存在だ。「求められた要素を盛り込むと、建物が敷地いっぱいに立つことは明らかだった。周囲の街になじむよう建物のボリューム感を抑えつつ、沖縄らしく、那覇の中心部という立地にふさわしい劇場空間を目指した」。そう話すのは、香山建築研究所(東京都文京区)所長の長谷川祥久氏だ。

 同社は、久米設計(同江東区)と根路銘(ねろめ)設計(那覇市)との3社JVで設計を手掛けた。同設計JVは、那覇市が実施した公募型プロポーザルで、16年3月に設計者に選定された。

コンクリートの“織物”

 建物を特徴付けているのは、緩やかにうねりながら連なるコンクリート製の外装パネルだ〔写真1〕。琉球王国(1429~1879年)の時代から受け継がれてきた伝統の織物「首里織」の織り柄を、コンクリートで表現したものだ。見付け寸法が50~90mmのコンクリートの“線材”を、織物のように縦横に編み込んで、厚さ22cmの立体パネルをつくった。沖縄発祥の新しい技術「HPC(ハイブリッド・プレストレスト・コンクリート)」を駆使して実現した(詳細は4ページ目参照)。

〔写真1〕深い軒下に「アマハジ」の空間
〔写真1〕深い軒下に「アマハジ」の空間
建物本体から張り出す外装パネルの足元には、奥行きのある軒下空間が続く。かつての沖縄の民家に見られた深い軒下の半屋外空間「アマハジ(雨端)」のような居場所をつくり、気軽に立ち寄れる場所とした(写真:小川 重雄)
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 繊細なコンクリートの外装パネルは、首里織の衣装にも通じる「用」と「美」を備える。細やかなパターン柄の意匠は、建物のボリューム感を抑えつつ、日の動きとともに陰影が変化して様々な表情を描き出す。機能面では、強い日差しを遮り、通風を促すだけでなく、台風時の飛来物から建物を保護するという沖縄ならではの役目も持つ。