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組みルーバーで光と視線の抜け確保

先進的な環境デザインを目指して、高層でも居住性豊かな室内空間をつくることに設計者が挑んだ。ルーバー形状をコンピュテーショナルデザインで最適化し、東西南北で配置や向きが異なる外装を実現した。

 2012年、永坂産業が指名プロポーザルで日建設計を設計者に選定した。設計者には、100年先まで使い続けることを見据えて先進的な考え方や技術の導入を求めた。

 「今後求められる建物として“環境とつながる超高層”を目指した。そのためには、高層階でも自然換気でき、東西南北の4面に対して最適な差異のある外装を持つことが重要だと考えた」(日建設計設計部門の矢野雅規ダイレクターアーキテクト)

 ルーバーは、コンピュテーショナルデザインを駆使し、同一の6本のアルミ型材を束のように組み合わせた〔写真5〕。工場でユニット化することで、施工性の向上も狙った〔写真6〕。

〔写真5〕6本の型材を組み合わせて1つのルーバーに
〔写真5〕6本の型材を組み合わせて1つのルーバーに
建物北側の外装、“組みルーバー”を内側から見る。組みルーバーは、同一断面のアルミ押し出し型材を6本組み合わせたものを1ユニットとした(写真:藤井 浩司)
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〔写真6〕工場でユニット化し施工性を向上
〔写真6〕工場でユニット化し施工性を向上
建物に取り付ける前、工場でユニット化した組みルーバー。東西南北、どの方角に設置するかで型材6本の向きや配置が異なる(写真:日建設計)
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 設計では、初めに東西南北の日射量と入射角度を計算し、各方角で必要なルーバーの間隔や太さを推定〔図2〕。その結果を基に、大きな扁平ルーバーを1枚ずつ設置するか、複数の型材をユニット化した“組みルーバー”を並べるのかを検討した。

〔図2〕日射量と入射角度を計算
〔図2〕日射量と入射角度を計算
敷地の角度を考慮し、各方角からの日射量と入射角度を計算した。これを基に、ルーバーに必要な太さや間隔を決めた(資料:日建設計)
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 大きな扁平ルーバーを並べると重なり合って面のように見え、室内に閉塞感を生む。一方、組みルーバーは並べても光と視線の抜けができる。

 輝度のシミュレーションで比較しても、扁平ルーバーは影の部分と、光を通す部分の輝度差が大きく、組みルーバーは輝度差を低減できることが分かった。

竣工後に実測検証

 型材の断面形状を1種類にするため、まずは三角形と仮定。デジタルシミュレーションによって光の反射や設置角度(回転)、配置などのパラメーターを最適化して、くさび形に至った。その型材を6本組み合わせる配置は、光と風、視線をどの程度通すかを考慮している〔図3〕。

〔図3〕居住性を高めるのに視線の抜けも重視
〔図3〕居住性を高めるのに視線の抜けも重視
1本ずつの型材は同じくさび形の断面。それらを6本組んで1ユニットとしている。6本の型材をどのように配置するかは、光と風、視線の抜けも考慮した(資料:日建設計)
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 「最終調整は、メーカーの三協立山が持つ技術的な知見を合わせて検討した」と、矢野ダイレクターアーキテクトは言う。送風試験や降雪暴露試験などを重ね、風切り音を抑え、かつ着雪しにくい形状を追求した。

 北面の組みルーバーは、やや内側に型材の向きを閉じて密集した配置であるのに対し、南面では型材が外に開き間隔も広い。施工後に室内で輝度を実測すると、北から光を採り入れつつ、南はグレアが低減できることを確認できた〔図4〕。

〔図4〕輝度を実測して南北の差を確認
〔図4〕輝度を実測して南北の差を確認
竣工後に輝度を測り、日射制御やグレア制御の効果を確認。左2点は南側、右2点は北側の開口(資料・写真:日建設計)
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