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2021年に開場100周年を迎えたフランス・アジャンのアルマンディスタジアム。改修を経て22年10月に新たなスタジアムとして生まれ変わった。「日常と非日常の両立」や「火災時の対応」など日本流の設計が盛り込まれた。

拡張・改修工事を終えて生まれ変わった、仏・アジャンにあるアルマンディスタジアム。写真左手の南側には運動公園、北側には住宅地が広がる。同施設の改修設計は、梓設計にとって欧州での初のスポーツ施設案件だった(写真:梓設計)
拡張・改修工事を終えて生まれ変わった、仏・アジャンにあるアルマンディスタジアム。写真左手の南側には運動公園、北側には住宅地が広がる。同施設の改修設計は、梓設計にとって欧州での初のスポーツ施設案件だった(写真:梓設計)
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 フランス南部でガロンヌ川の河畔に位置する人口約3万3000人の地方都市、アジャン市。同市を拠点に活動するプロラグビーチーム「SU Agen(アジャン)」のホーム施設、「アルマンディスタジアム(STADE ARMANDIE)」が改修工事を経て、2022年10月に生まれ変わった〔写真1〕。

〔写真1〕将来を見据えて拡張性を持たせる
〔写真1〕将来を見据えて拡張性を持たせる
上は南東から見た改修後のスタジアム。右は西から見た改修前の様子。北側バックスタンドを建て替え、西側スタンドの屋根を増設した。改修工事によってスタジアムの席数は約9900席から約1万1400席に増えた。将来的にはスタジアム東側にホテルを建設予定だ(写真:梓設計)
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 市内の運動公園内に立つ同スタジアムは、21年に開場100周年を迎えた歴史ある施設だ。3つのスタンドで構成し、最大収容人数は約1万4000人。敷地北側には住宅地が広がり、ラグビーの試合時には街の多くの人が集まって試合に熱狂する。

 アジャン市のJean Dionis(ジャン・ディオニス)市長は完成セレモニーで、「私たちは今日、1万人規模の新スタジアムを手に入れた。このスタジアムの新しい可能性に命を吹き込むのは私たちだ。単なるスタジアムではなく、生活の場の一部として使ってほしい」とスピーチした。

 アルマンディスタジアムの改修設計を手掛けたのは梓設計(東京都大田区)だ。1972年に建設された北側バックスタンドの老朽化への対応と、スタジアム全体で1万席以上の座席を確保することを求めていた市は2020年にプロポーザルを実施。梓設計は現地設計事務所の仏François de LA SERRE(フランソワ・ドゥ・ラ・セール)と共同企業体(JV)を組んで、プロポーザルを勝ち取った。梓設計にとって欧州で手掛ける初のスポーツ施設案件だ。

 改修のコンセプトは、「スタジアムが街の顔となり、街の社交場になる」。梓設計アーキテクト部門の永瀬秀格ダイレクターは、次のように説明する。「観戦空間としてだけではなく、日常的に使われる場として改修することで、地域に貢献できるスタジアムにすることを意識した」