姫路市文化コンベンションセンター「アクリエひめじ」(兵庫県姫路市)
街路空間で複合施設を一体に
姫路城の石垣に倣った大型レンガを内外に 発注:姫路市 設計:日建設計 施工:竹中工務店・神崎組・平錦建設JV
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兵庫県姫路市は、姫路城などの観光とスポーツとコンベンションを連携させた国際都市を目指している。拠点として、ホールや展示場、会議室など、MICEの開催も視野に入れた大型複合文化施設が完成した。
メインアプローチとなる西側の外観。細いPC柱に支えられた深い軒を張り出し、大きな屋根全体を緑化している。右下に見えるのは、姫路駅に通じる連絡デッキ。敷地の南側を、JR山陽本線・山陽新幹線が走る。下は播但線の高架橋(写真:土田 昌平)
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緑に包まれた公園内から緩やかなスロープを上がっていくと、まもなく大型文化施設にたどり着く〔写真1〕。2021年9月1日、兵庫県姫路市にオープンした姫路市文化コンベンションセンター「アクリエひめじ」の2階メインエントランスだ。
〔写真1〕隣接する公園も一体整備
道路を隔てた西側にある「キャスティ21公園」も一体的に整備した。屋根の架かるスロープは、その後、連絡デッキとなって施設のエントランスに行き着く(写真:土田 昌平)
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内部に入ると、向こうの出入り口まで約100mにわたって一直線に共用ロビーが延びている。トップライトの光で刻々と表情を変える大型レンガの壁面が続く共用ロビーは、開放的な街路のような空間だ〔写真2〕。
〔写真2〕100m続く大型レンガ積みの壁
2階のメインエントランスを入ると長さ100mの共用ロビーが延びている。トップライトの光によって一面のレンガ壁が刻々と表情を変える。共用ロビーを出た東の先には、2022年5月開院予定の「兵庫県立はりま姫路総合医療センター」につながる連絡デッキがある(写真:古川 泰造)
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「レンガという古来の材料を使って、新しい空間の創出に挑んだ」。設計をとりまとめた日建設計フェロー役員デザインフェローの江副敏史氏がそう話すレンガ積みの壁は、建物内外で連続的に見ることができる。なかでも、共用ロビーやホールホワイエなどの内部空間や、外壁に積んだレンガは、姫路城の石垣の風合いにこだわって製作したものだ〔写真3〕。
〔写真3〕大ホールのホワイエもレンガ積み
共用ロビーと同じレンガ積みの壁が、大ホールのホワイエまで続いている。レンガの大きさは、幅540mm、高さ150mm、厚さ80mm。黄色味を帯びた姫路城の石垣に倣い、4種類の色幅を設定し、一定の色ムラが出るように焼成した。内外装で約15万個のレンガを使った(写真:古川 泰造)
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レンガだけではない。この建物には、シラサギや姫路市章など姫路を象徴する分かりやすいモチーフが、それとなくデザインに溶け込ましてある。姫路らしさを意識した背景には、施設が担う市民利用や国際交流の促進といった役割がある。