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ため池の多い大阪府松原市で2020年1月末、池の中に立つ新たな市立図書館が誕生した。600mm厚の鉄筋コンクリート(RC)耐震壁で覆い、内外とも断熱材や仕上げをなくしている。

池に浮かぶ「松原市民松原図書館」。旧松原図書館の西隣、田井城今池親水公園の中に立つ。建物を600mm厚の鉄筋コンクリート耐震壁で覆い、内部を鉄骨造とすることで、下部構造への負担を軽減している(写真:生田 将人)
池に浮かぶ「松原市民松原図書館」。旧松原図書館の西隣、田井城今池親水公園の中に立つ。建物を600mm厚の鉄筋コンクリート耐震壁で覆い、内部を鉄骨造とすることで、下部構造への負担を軽減している(写真:生田 将人)
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北側全景。外壁は、粗ベニア型枠による打ち放しで、年月を経たような表情を見せる。斜めに傾けた壁で圧迫感を軽減させている(写真:生田 将人)
北側全景。外壁は、粗ベニア型枠による打ち放しで、年月を経たような表情を見せる。斜めに傾けた壁で圧迫感を軽減させている(写真:生田 将人)
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 大阪府のほぼ中央に位置し、大阪市や堺市に接する松原市に、「池に浮かぶ図書館」が開館した。場所は、近畿日本鉄道南大阪線の河内松原駅から徒歩約10分。文化施設が集まる松原中央公園の隣のため池がある一角で、土木建造物のような存在感を放つ。

 松原市には、約4km四方の市域に6館の市立図書館がある。松原市民松原図書館(以下、松原図書館)は、その中央館的な位置付けだ。

 1980年に開館した旧松原図書館の延べ面積は1551m2。中央館として運用するには十分な規模とは言えず、市は、西隣にある田井城今池親水公園の中に新図書館を整備することにした。2017年に実施した公募型プロポーザルで、最優秀提案者に選定したのがMARU。architecture(マルアーキテクチャ)(東京都台東区)と鴻池組による設計・施工JVだ。

池の中に斜めに立ち上がる

 新図書館の外壁は、600mm厚の鉄筋コンクリート(RC)造だ。設計を担当したMARU。architecture代表の高野洋平氏は、「市内に点在する古墳のように自然と融合し、中央館としての力強さも備えた建築物を目指した」と語る。

 分厚いRC外壁は地震や風による水平力をすべて負担する。建物内部には、鉛直荷重のみ支持する鉄骨フレームを組み、吹き抜けとスキップフロアで1階から3階までの屋内空間を立体的につなげている〔写真1~3〕。

〔写真1〕放射状に書架を配置
〔写真1〕放射状に書架を配置
1階の一般開架を見下ろす。1階は一般書と地域資料が並ぶフロア。書架は視線の抜けと通風を考慮して、放射状に配置し、閲覧席は窓の近くに設けた(写真:生田 将人)
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〔写真2〕テーブルに床輻射のパイプ
〔写真2〕テーブルに床輻射のパイプ
1階西側の閲覧スペースを見る。細長いテーブルの脚は現場打ちコンクリート。中に床輻射冷暖房用のパイプが立ち上がっている(写真:生田 将人)
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〔写真3〕書架とホールに1mのレベル差
〔写真3〕書架とホールに1mのレベル差
エントランスホールから見る一般開架。左手はサービスカウンター。開架の床はエントランスホールから1mほど下がっている(写真:生田 将人)
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 斜めに立つRC躯体とピンクがかった打ち放し仕上げも外観を目立たせている。MARU。architecture取締役の森田祥子氏は、「ゆったりとしたたたずまいとはいえ、建物自体は道路とかなり近接している。建築的に圧迫感を軽減する意味で、壁を倒して、なおかつ道路に対して平面的にも角度を付けた」と壁を斜めにした狙いを語る。

 色に関しては、周囲の景観との調和を図った。「舗装のインターロッキングがピンクで、隣に立つ市民体育館も外装はピンクっぽい。さらに、旧松原図書館は赤レンガ仕上げと、街全体が赤味を帯びていることからピンクがなじむと思った」(森田氏)