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ZOZOが2021年2月に、本社を千葉市の海浜幕張から西千葉に移転。大空間のオフィスをつくった。吊り屋根を採用して柱を少なくしたスペースには、働き手が選べる多様な場をちりばめた。

 本社屋は経営哲学を形にした象徴的な存在であるべきだ──。

 ファッション通販サイトである「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するZOZOが2021年2月15日に移転した新しい本社屋は、冒頭の言葉を体現している。同社が本社に望むものと必要でないものは明確だ。

 地下1階・地上2階建ての建物の大部分を、執務スペースが占める〔写真12〕。座席数は約300。地上1~2階の執務スペースは、仕切りがないワンルームの大空間だ。社員の多くはここで仕事をする。

〔写真1〕外から丸見えの執務スペース
〔写真1〕外から丸見えの執務スペース
街とオフィスのつながりを重視し、ガラス張りの職場を前面道路に接するように配置した。道路の向かい側には、所有地を地域に開放して設けた「ZOZOの広場」がある。2階の執務スペースからは、細い木材の格子で表面を覆った天井が布のようにゆったり垂れる様がよく見える(写真:吉田 誠)
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〔写真2〕3つの大屋根と外壁をずらす
〔写真2〕3つの大屋根と外壁をずらす
大空間の執務スペースに自然光を取り込むため、屋根をずらして建物上部に明かり取りの窓を設けた。NAPの中村代表は「効率よく働くには、自然光で時間の変化を感じられた方がいい」とも考えた。3つの屋根は前面道路側に向かって低くし、街への圧迫感を減らしている。トイレやエレベーターなど執務スペース以外の機能は、建物の向かって右側(東側)に集約した(写真:吉田 誠)
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 ZOZOには以前から「仕事は早く終わらせ、早く帰る」という哲学が根づいている。だらだら働き、遅くまで会社に残ることを誰も望んでいない。

 本社に求めたのは、集中して働ける場所だ〔写真3〕。執務スペースはワンルームでありながら、多様な座席を用意した。通常のオフィステーブル席もあれば、窓際のカウンター席、緩く仕切った2階のこもりスペース、階段脇のソファなど、目的に応じて使い分けられるようにしている〔写真4〕。

〔写真3〕仕切りがないオープンなオフィス空間
〔写真3〕仕切りがないオープンなオフィス空間
屋根を吊って内部の柱を少なくし、圧迫感がなく見通しが良い執務スペースを設けた。スキップフロアを採用し、大きな部屋にいながら様々な働き方ができるように工夫している。半地下の窓際にあるカウンター席からは外構に植えた緑が見え、季節を感じられるようにした(写真:吉田 誠)
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(写真:ZOZO)
(写真:ZOZO)
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(写真:ZOZO)
(写真:ZOZO)
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〔写真4〕執務スペースの中央に階段
〔写真4〕執務スペースの中央に階段
執務スペースのどこにいても1~2階を行き来しやすいように、部屋の中央に階段を配置した。その両側には造作のソファを設け、仕事にも休憩にも使えるようにしている(写真:吉田 誠)
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(写真:ZOZO)
(写真:ZOZO)
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(写真:ZOZO)
(写真:ZOZO)
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 設計者の1社であるNAP建築設計事務所(東京都港区)の中村拓志代表は、「スキップフロアにして目線の高さを変えたり、天井高を2~8mと差を付けたり、窓から前面道路を通る人や裏手の緑が見えるようにしたりと、各自が働きやすく集中できる場を見つけられるようにした」と話す。

 部屋を区切らずワンルームにすることにこだわったのは、「会社に来たら常に同僚の気配を感じ、すぐに話ができる一体感のある親密な場にもしたい」と考えたからだ。

 地下1階には会議室が並ぶが、地上階とは違いシンプルな部屋ばかり。「集まって話せる場であればいい」と割り切った。ネット企業に見られる充実した社員食堂もない。おなかが空いたら、近隣の飲食店に出向く。