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新型コロナウイルスの影響でオープンが延びていた京都市美術館が2020年5月26日に開館した。設計者は、「歴史的な建物の保存」と「現代の美術館としての活用」という矛盾する難題に挑んだ。

北西側からの全景。建物前の広場は、以前は平たんだった。建物正面の地下にメインエントランスを増築するのに伴い、スロープ状にランドスケープを変えた。地面を押し下げたような部分にはガラスをはめて、「ガラス・リボン」と呼ぶ新たな空間をつくった。リボンがふわりと膨らむ中央がメインエントランスだ。敷地の右側に見えるのは平安神宮の大鳥居と神宮道(写真:生田 将人)
北西側からの全景。建物前の広場は、以前は平たんだった。建物正面の地下にメインエントランスを増築するのに伴い、スロープ状にランドスケープを変えた。地面を押し下げたような部分にはガラスをはめて、「ガラス・リボン」と呼ぶ新たな空間をつくった。リボンがふわりと膨らむ中央がメインエントランスだ。敷地の右側に見えるのは平安神宮の大鳥居と神宮道(写真:生田 将人)
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断面図
断面図
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 京都の文化・交流ゾーン、岡崎地区に立つ「京都市美術館」。帝冠様式の本館は前田健二郎(1892~1975年)の設計で1933年に建てられた。創建当初の姿のまま現存し、公立美術館の建物として国内最古だ。

 約3年に及ぶ大規模改修工事を経て、見慣れた建物の正面ファサードの地下に新たな風景が生まれた〔写真1〕。人々は緩やかなスロープ状の広場を下りて、ガラスで覆われたメインエントランスに入っていく。

〔写真1〕建物の新旧の顔が上下に
〔写真1〕建物の新旧の顔が上下に
既存本館は鉄骨鉄筋コンクリート造の2階建て。帝冠様式は、洋風建築の上に和風の屋根を載せたデザインのこと。旧玄関庇の下の柱は新設(写真:生田 将人)
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 改修の基本設計は、15年の公募型プロポーザルで選ばれた青木淳・西澤徹夫設計共同体が手掛けた。西澤徹夫氏(西澤徹夫建築事務所、東京都中央区)は青木淳建築計画事務所(東京都港区)の出身。青木淳氏が師弟で共同設計するのは初めてだ。