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青森県むつ市に2020年3月、居室ユニットを放射状に配した特別養護老人ホームが開所した。職員の負担を軽減するように動線を徹底的に見直した結果、生まれたのが花びら形の平面構成だ。

南側から見下ろす。5弁の花びらを2つつなげたかのような平面構成が特徴だ。花びらの先端部分に見えるのはサンバルコニーと呼ぶサンルーム(写真:小林 浩志)
南側から見下ろす。5弁の花びらを2つつなげたかのような平面構成が特徴だ。花びらの先端部分に見えるのはサンバルコニーと呼ぶサンルーム(写真:小林 浩志)
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 「特別養護老人ホーム桜木園」は、10人で1ユニットのグループごとに介護を行うユニット型の特別養護老人ホーム(特養)だ。青森県の東北部、下北地方に位置するむつ市に、2020年3月末、開所した。8つあるユニットに、ショートステイを含む80人が入居できる。5弁の花びらを2つつなげたような平面構成が特徴だ。

 設計は、白川直行アトリエ(北九州市)代表の白川直行氏とwaiwai東京事務所(東京都台東区)代表の山雄和真氏が共同で手掛けた。両氏が組むきっかけをつくったのは、彼らの作品をよく知る写真家だ。この写真家が桜木園を運営する社会福祉法人桜木会の理事長に紹介した。

 5弁の花びらで構成するプランは、九州で福祉施設を多数手掛けてきた白川氏が今までに感じた問題点を整理したうえで生まれたアイデアだ。「大型特養の計画に欠けていたのは、そこで働く人に対する配慮。今回は、職員の動線を徹底的に見直すとともに、夜間にまわりの状況を把握しやすい視野の角度を探した」(白川氏)

 こうしたユニット型特養の場合、厚生労働省の基準によると、昼間は1ユニットごとに常時1人以上、夜間は2ユニットごとに1人以上の介護職員または看護職員を配置する必要がある。夜勤職員の動線を考えると、2ユニットをスタッフステーションでつなぐのが最も合理的だ〔写真1~3図1〕。

〔写真1〕ユニットに下北半島の樹木名
〔写真1〕ユニットに下北半島の樹木名
イーストホール。縦格子の扉が各ユニットへの入り口だ。ユニットにはそれぞれ、下北半島に生育する樹木の名前を付けている。左から「ヒバ」「ヤマボウシ」「キリ」(写真:小林 浩志)
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〔写真2〕ユニット中央に共同生活室
〔写真2〕ユニット中央に共同生活室
各ユニットの中央に配置した共同生活室。桜木園は以前、4人部屋から成る従来型の特養だったが、利用者のプライバシーを尊重するユニット型個室タイプに移行した(写真:小林 浩志)
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〔写真3〕花びらの付け根に職員
〔写真3〕花びらの付け根に職員
スタッフステーション。夜勤職員の動線を考慮して、2ユニットごとに1カ所、花びらの付け根部分に配置した。向かい側の2ユニットの状況を、ガラス越しに把握できる(写真:小林 浩志)
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〔図1〕花びら1枚が1ユニット
〔図1〕花びら1枚が1ユニット
2階の構成パース。左右4枚ずつ、計8枚ある花びらは、1枚1枚が特養の1ユニット。真ん中の花びらには、特別浴室や医務室などが入る。右の花びらの下側2ユニットはショートステイ(資料:waiwai)
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 各ユニットの形は、「従来からある縦長居室よりは、少しでも横幅を取った方が喜ばれる。つまり外壁の長さを確保したい」(白川氏)などの狙いから、曲面で囲んだ花びら状になった。花びら1枚は1ユニットに当たり、2枚の花びらの付け根をスタッフステーションでつないだ格好だ。

 夜間は隣接する別の2ユニットの職員を応援するケースも考えられる。そこで、2ユニットと隣の2ユニットを組み合わせた際の動線を検討した。結果として、隣同士が72度で交わる軸線に沿って、ユニットが放射状に並ぶ配置構成が導かれた。