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築100年のレンガ倉庫を改修した美術館がオープンした。歴史の重みを感じさせる展示室が特徴だ。「シードル・ゴールド」の色をした屋根がきらめく。青森県弘前市の新たな文化拠点として期待される。

写真右が「ミュージアム棟」、左が「カフェ・ショップ棟」。ミュージアム棟の入り口には、レンガをずらした「弘前積み」と呼ぶ積み方を用いた。建物の間に「ミュージアム・ロード」を配置して回遊性を高めた。チタンの菱ぶき屋根は、光の加減で様々な表情を放つ(写真:吉田 誠)
写真右が「ミュージアム棟」、左が「カフェ・ショップ棟」。ミュージアム棟の入り口には、レンガをずらした「弘前積み」と呼ぶ積み方を用いた。建物の間に「ミュージアム・ロード」を配置して回遊性を高めた。チタンの菱ぶき屋根は、光の加減で様々な表情を放つ(写真:吉田 誠)
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 7月11日、青森県弘前市の中心にある吉野町緑地に「弘前れんが倉庫美術館」がグランドオープンした。明治・大正期に酒造工場としてつくられた「吉野町煉瓦(れんが)倉庫」を現代美術館に用途変更し、大規模修繕を行った。PFI(民間資金を活用した社会資本整備)事業で緑地とミュージアム棟を改修、整備し、その北側に隣接するカフェ・ショップ棟を付帯事業で新築した。

産業遺産を文化拠点に

 近代産業遺産であるレンガ倉庫の保存・活用については、1990年代から美術館構想があった。市が土地を取得し、本格的な整備が始まったのは2015年。その間の00年代に、弘前出身のアーティストである奈良美智氏の展覧会を、市民の手によって改修前のレンガ倉庫で開催したことが美術館転用の機運を高めた。

 ミュージアム棟は5つの展示室の他に、市民ギャラリーやスタジオ、ライブラリーを持つ。地域の文化芸術活動の拠点という位置付けだ。

 新しくチタンをふいた屋根は、光の加減によって時々刻々と違う表情を見せる。戦後、日本初のシードル工場として稼働していた建物の歴史にちなんで、「シードル・ゴールド」と呼ばれ、地域の人々にも好評だ。