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表参道ヒルズなど商業施設のひしめく原宿エリアに、複合施設「ウィズ原宿」がオープンした。約8mの高低差がある地形に沿うように段状テラスを設け、半屋外通路を貫通させた。

 例年は観光客や修学旅行生などでごった返すJR原宿駅前も、2020年の春は新型コロナの影響で人通りはまばらだった。その中で、新たな複合施設「WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)」が6月に開業を迎えた。設計を担当したのは竹中工務店と伊東豊雄建築設計事務所(東京都渋谷区)、施工は竹中工務店だ。

 施設には、原宿エリアで最大規模となる約1万300m2の商業エリアを配置した。家具販売大手のイケア・ジャパン(千葉県船橋市)が国内で初めて出す都市型店舗や、大型店舗の「ユニクロ原宿店」などが入居し、話題を呼んだ。

 敷地は都心にありながら、明治神宮の杜が迫る緑豊かな環境だ〔写真1〕。また、高級ブランドのショップが立ち並ぶ表参道と、若者カルチャーの発信地である竹下通りに挟まれ、異なる文化がぶつかる場所といえる。

〔写真1〕駅前に出現した緑の丘
〔写真1〕駅前に出現した緑の丘
「ウィズ原宿」の敷地周辺は、高低差のある地形であるがゆえに、かつて「源氏山」と呼ばれていた。その風景を再現するため、建物の東側を段状にセットバックして緑化し、「緑の丘」となることを目指した。写真右奥で緑が広がる部分が明治神宮だ(写真:ナカサアンドパートナーズ)
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 課題となったのが、最大8mの高低差がある敷地条件だった。設計者の1人である伊東豊雄氏は、「かつて源氏山と呼ばれたほど、起伏のある地形だ。その条件をどう建築として解決していくかが今回の課題であり、やりがいだった」と語る。

 建物は建築基準法上、2棟に分かれている。JR原宿駅寄りの南敷地に建つのが、施設のメインとなる建物だ。地下3階・地上10階建て。低層部に店舗や展示場、高層部に賃貸レジデンスが入る〔写真23〕。

〔写真2〕ファサードを分節して独立店舗に見せる
〔写真2〕ファサードを分節して独立店舗に見せる
JR原宿駅東口を出てすぐの場所に「ウィズ原宿」は建つ。ガラスファサードが続く低層部の間口は約70m。6区画に分節化し、それぞれが独立した路面店として見えるようにした(写真:安川 千秋)
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〔写真3〕メゾネットのユニクロ店内
〔写真3〕メゾネットのユニクロ店内
店舗は全てメゾネットとした。写真は、地下1階と地上1階のメゾネットで展開する「ユニクロ原宿店」。店舗の内装設計はそれぞれ異なるが、窓は視線が抜けるように配慮するようルールを設けた(写真:安川 千秋)
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 一方、竹下通りや住宅地に近い北敷地の建物は、地下1階・地上2階建てだ。この2棟を、エキスパンションジョイントでつないでいる。