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淡路島の山間地にオープンした、禅の体験ができる宿泊施設「禅坊 靖寧(ぜんぼう せいねい)」。「空中座禅道場」という風変わりな要望にいかに応えたのか。坂茂氏がこだわったディテールに迫る。

4月末にオープンした禅の体験ができる宿泊施設「禅坊 靖寧」。発注者のパソナグループは、オーシャンビューを楽しめるホテル「望楼 青海波」や、アニメの世界を体感できるテーマパーク「ニジゲンノモリ」など、淡路島に宿泊施設や観光施設を次々展開している(写真:生田 将人)
4月末にオープンした禅の体験ができる宿泊施設「禅坊 靖寧」。発注者のパソナグループは、オーシャンビューを楽しめるホテル「望楼 青海波」や、アニメの世界を体感できるテーマパーク「ニジゲンノモリ」など、淡路島に宿泊施設や観光施設を次々展開している(写真:生田 将人)
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 淡路島の山間地に立つ全長約100mの木の建築。力強い造形だが、周辺の木々よりも高いレベルにある2階の屋外デッキを歩いてみると、強かったはずの建築の存在感が消え、宙に浮いているような不思議な感覚を受ける〔写真12〕。

〔写真1〕木造では異例の21mスパン
〔写真1〕木造では異例の21mスパン
建物の南側約45mは傾斜地から張り出している。南端を12mのキャンチレバーとすることで、21mスパンを支える鉄骨格子フレーム柱脚にかかる応力を軽減する(写真:生田 将人)
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長手方向断面図
長手方向断面図
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〔写真2〕幅7.2mの屋外デッキを大屋根で覆う
〔写真2〕幅7.2mの屋外デッキを大屋根で覆う
建物の北側がエントランス。地上1階の東西面に入り口がある。写真中央の階段を使って、外から直接2階の屋外デッキにアクセスすることもできる(写真:生田 将人)
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長手方向断面詳細図
長手方向断面詳細図
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 これは禅の体験ができる宿泊施設「禅坊 靖寧」だ。木と鉄骨のハイブリッド構造で、木材使用量は仕上げを含めて約420m3に上る。2022年4月末にオープンした。

 設計を手掛けたのは坂茂建築設計(東京都世田谷区)。同社代表取締役の坂茂氏は初めに敷地へ案内された時、パソナグループの南部靖之代表から「『空中座禅道場』をつくってほしい」と言われた。

 この風変わりな要望に対して坂氏は、「空中で座禅を組むとはどういうことか、それを建築に落とし込むにはどうすればよいか自問した」と振り返る。出した答えは、「自然に囲まれて、中に入ると建物の存在を忘れてしまうような建築」(坂氏)だ。