3Dとシミュレーションを駆使

 暑さが厳しいリヤドは、まれに砂や小石を含んだ砂嵐に見舞われる。そのため、建築全体を耐衝撃性や耐摩耗性などを備えたパネルで保護する必要があった。さらに、延べ面積が7万m2に及ぶ建物全体を覆うため、大量生産できることも条件となった。

 FRP(繊維強化プラスチック)や花こう岩、プレキャストコンクリートなど、様々な材料を検討した結果、選ばれたのがGRC(ガラス繊維強化セメント)だ〔写真4〕。GRCは、結晶体をイメージした外観デザインにマッチしている。

〔写真4〕砂嵐に耐える外部仕上げ
〔写真4〕砂嵐に耐える外部仕上げ
建物の被覆材の検討に時間をかけた。砂や小石を含んだ砂嵐の発生を考慮し、耐衝撃性や耐摩耗性を備えたGRCを採用した(写真:Hufton+Crow)
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 GRCの採用決定後、コンピューターシミュレーションにより、拡散された反射光や卓越風の取り込み方を検討した。方角に応じて、取り込み口の大きさや角度、棟自体の高さを調整し、3Dモデルを用いて、構造を決定した。

 5棟に分かれた各棟は、複数のユニットで構成している〔写真5〕。棟全体を、6角柱状のユニットを組み合わせたハニカム構造にすることで、使用する資材を最小限に抑えた〔図1〕。また、ユニットを追加することで、今後の施設用途や作業方法の変化に合わせて、容易に棟を改修、拡大することが可能になった。

〔写真5〕複数のユニットで1棟を構成
KAPSARCのフレーム模型。大小5つの棟は、それぞれ複数のユニットで構成される(写真:Zaha Hadid Architects)
KAPSARCのフレーム模型。大小5つの棟は、それぞれ複数のユニットで構成される(写真:Zaha Hadid Architects)
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最終模型。各棟は半屋外空間のセンターコートヤードでつながる(写真:Zaha Hadid Architects)
最終模型。各棟は半屋外空間のセンターコートヤードでつながる(写真:Zaha Hadid Architects)
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〔図1〕長さ200mを超えるリサーチセンター
〔図1〕長さ200mを超えるリサーチセンター
断面図 図の左側が北西で、右側が南東。複数のユニットを組み合わせ、北西から南東にかけて建物を徐々に高くしている(資料:Zaha Hadid Architects)
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 KAPSARCの設計では、3Dモデルとコンピューターシミュレーションの活用で、複雑な構造と自然エネルギーの利用を両立している。

祈りのための祈祷室・ムサラ。サウジアラビアは国民の大半がイスラム教徒のなかでも戒律が厳しいワッハーブ派に属する。1日5回ある祈りの時間のために祈祷室がつくられた(写真:Hufton+Crow)
祈りのための祈祷室・ムサラ。サウジアラビアは国民の大半がイスラム教徒のなかでも戒律が厳しいワッハーブ派に属する。1日5回ある祈りの時間のために祈祷室がつくられた(写真:Hufton+Crow)
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