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老舗の「京都鳩居堂」が本店社屋を建て替えるとともに、通りの向かいに第2店舗を新設した。通りに対して同じ表情を持ちながらも性格の異なる両店舗が、商店街に新しい風景を生み出す。

(写真:吉田 誠)
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(写真:吉田 誠)
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「京都鳩居堂」の本店に当たる第1店舗。本能寺の門前で、寺町通沿いの角地に立つ。1663年の創業以来、この場所で商いを続けてきた。以前は2階建てで、アーケードを超える高さがあったが、今回の建て替えで店舗部分は平屋にした。繊細で軽快な内部空間を黄竜山石(きたつやまいし)張りの壁でしっかり囲い込んでいる

 お香や書画用品、和紙製品の老舗「京都鳩居堂」が、京都・寺町の創業地に構える本店社屋を106年ぶりに建て替え、2020年11月に開業した。21年4月には、寺町通を挟んで斜め向かいに新築し、仮店舗として使用していた第2店舗もリニューアルオープン。いずれも内藤廣建築設計事務所(東京都千代田区)の設計だ。

 以前の本店は木造2階建てだったのを、鉄骨造・一部鉄筋コンクリート造で、アーケード側は平屋、奥は2階建ての構成に変えた。これによって通りに光が入るようになり、一帯がぐっと明るくなった。

 屋根にむくりを付けているので、通りから瓦がよく見える。設計者の内藤廣氏は、「むくり屋根は通りに対してちょっとお辞儀をしている感じで、柔らかい印象になる」と話す。

 平屋部分は丸ごと売り場だ。切妻屋根の水平方向のスラスト(開き)を抑えるために取り付けた丸鋼の補剛材が繊細な表情を生んでいる〔写真1〕。「商品の繊細さに呼応させるとともに、京都の繊細さを天井面で表現したいと思った」(内藤氏)

〔写真1〕繊細さを構造の補剛材で表現
〔写真1〕繊細さを構造の補剛材で表現
第1店舗は屋根の頂部にトップライトを設けた。補剛材として用いた丸鋼は直径16mm。什器の6~7割は以前のものを再利用し、新たにつくった什器も既存に合わせた。照明は内藤氏のデザイン(写真:吉田 誠)
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 売り場の奥には中庭を設けた。その北側に、香室を備える2階建てが立つ〔写真2~4〕。

〔写真2〕店の奥に新たに設けた中庭
〔写真2〕店の奥に新たに設けた中庭
中庭は売り場から出入りできる。内藤氏は「店が売り場だけで完結せず、奥に何かあることが通りから感じられるようにしたかった」と言う。軒庇はリン酸処理を施したスチールプレート、軒天はスギ、ランマ壁の仕上げは焼きスギ、床は売り場も黄竜山石張り(写真:吉田 誠)
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〔写真3〕以前の記憶をとどめつつ再構成
〔写真3〕以前の記憶をとどめつつ再構成
1階の香室は、銀閣寺の香座敷・弄清亭(ろうせいてい)の間取りや寸法を参照したうえで、スギルーバーの光天井と黒い壁にした。床板(とこいた)や縁側、障子の腰板などに、以前の木造店舗の部材を再利用している(写真:吉田 誠)
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〔写真4〕売り場も座敷も中庭に面する
〔写真4〕売り場も座敷も中庭に面する
中庭。以前は本店の2階を倉庫として使っていたが、新築した事務所棟に倉庫スペースを設け、売り場面積を減らすことなく中庭をつくった(写真:吉田 誠)
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