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「旧九段会館」を保存・復元しながらオフィスとして日常使いする──。皇居の内堀に接する稀有(けう)な立地に新旧融合の施設を建てた。

2022年10月1日に開業した施設「九段会館テラス」。手前が帝冠様式を取り入れた保存棟、後ろの高層ビルが新築棟だ。両棟は境目なくつながり一体化している。保存棟の「旧九段会館」は19年に、国の登録有形文化財になっている(写真:吉田 誠)
2022年10月1日に開業した施設「九段会館テラス」。手前が帝冠様式を取り入れた保存棟、後ろの高層ビルが新築棟だ。両棟は境目なくつながり一体化している。保存棟の「旧九段会館」は19年に、国の登録有形文化財になっている(写真:吉田 誠)
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 タイル張りの外壁に、瓦ぶきの勾配屋根。昭和初期の帝冠様式を今に伝える「旧九段会館」の建物が、2011年の廃業から約11年の時を経てよみがえった。東急不動産と鹿島が出資した合同会社ノーヴェグランデが22年10月1日に開業した施設「九段会館テラス」である。設計者は鹿島・梓設計JV、施工者は鹿島だ。

 九段会館テラスは地下3階・地上17階建てで、高さは約75m。国の登録有形文化財である旧九段会館の一部を残した「保存棟」と、巨大なオフィスフロアを備える「新築棟」から成る。両棟の間に境界をなくし、建物を一体化しているのが大きな特徴だ。

 「ただ眺めるだけの飾りのような保存はしたくない。使いながら残す『動的保存』が、一番価値が高い」。旧九段会館の土地と建物を17年に落札した東急不動産と鹿島は、使い続けることにこだわった。

 4本の柱が支える大庇を抜けると、創建当時の面影を色濃く残す褐色の大理石に囲まれた玄関ホールに出る〔写真1〕。今も昔もここが正面玄関だ。

〔写真1〕これからも使い続ける玄関ホール
〔写真1〕これからも使い続ける玄関ホール
九段会館テラスの正面エントランスは昔と変わらず、この玄関ホールだ。壁は創建当時の褐色の大理石。軍人会館の名残であるサーベル模様の装飾もそのまま(写真:吉田 誠)
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 保存部分は手を触れないのではなく、これからも使えるレベルまで安全性を確保する。それが動的保存のポイントといえる。

動的保存の要
吹き抜けの「プラザ」で新旧を調和
南北断面図(資料:鹿島の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
南北断面図(資料:鹿島の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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左:歴史の舞台になったかつての役員室。軍人会館時代の雰囲気が残る 右:隣にある応接室。創建後に補修された壁の塗装を剥がしたところ、金糸の刺しゅうが施された織物クロスが見つかった。正倉院宝物殿にある銀壺(ぎんこ)に類似する模様と分かり、急きょ保存を決定(写真:吉田 誠)
左:歴史の舞台になったかつての役員室。軍人会館時代の雰囲気が残る 右:隣にある応接室。創建後に補修された壁の塗装を剥がしたところ、金糸の刺しゅうが施された織物クロスが見つかった。正倉院宝物殿にある銀壺(ぎんこ)に類似する模様と分かり、急きょ保存を決定(写真:吉田 誠)
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今ではほとんど手に入らない貴重な大理石を残した。手すりも創建当時のものだが、全ていったん外して付け直した(写真:吉田 誠)
今ではほとんど手に入らない貴重な大理石を残した。手すりも創建当時のものだが、全ていったん外して付け直した(写真:吉田 誠)
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昭和初期の姿を今に伝える堂々とした大庇と太い柱(写真:吉田 誠)
昭和初期の姿を今に伝える堂々とした大庇と太い柱(写真:吉田 誠)
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4枚1組のブロンズ扉を3年がかりで修復。1枚250kgの重さがある(写真:吉田 誠)
4枚1組のブロンズ扉を3年がかりで修復。1枚250kgの重さがある(写真:吉田 誠)
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バンケットルームやゲストルームに向かうモザイク模様の廊下(写真:吉田 誠)
バンケットルームやゲストルームに向かうモザイク模様の廊下(写真:吉田 誠)
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日本武道館を見下ろせる高層階のオフィスフロア。基準階の貸し床面積は約2500m<sup>2</sup>(写真:吉田 誠)
日本武道館を見下ろせる高層階のオフィスフロア。基準階の貸し床面積は約2500m2(写真:吉田 誠)
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保存棟の2~4階にあるクラシックな内装のオフィス。天井は配管をむき出しにして天井高を確保(写真:吉田 誠)
保存棟の2~4階にあるクラシックな内装のオフィス。天井は配管をむき出しにして天井高を確保(写真:吉田 誠)
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新旧の融合を促すため、壁を左官仕上げにしたり、レトロな装飾品を選択したりして、保存棟とのつながりを持たせた(写真:吉田 誠)
新旧の融合を促すため、壁を左官仕上げにしたり、レトロな装飾品を選択したりして、保存棟とのつながりを持たせた(写真:吉田 誠)
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オフィス入居者を主な対象にした食堂「九段食堂 KUDAN-SHOKUDO for the Public Good」。一般客も利用可能。内堀を見ながら食事ができる(写真:日経クロステック)
オフィス入居者を主な対象にした食堂「九段食堂 KUDAN-SHOKUDO for the Public Good」。一般客も利用可能。内堀を見ながら食事ができる(写真:日経クロステック)
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玄関ホールやオフィスエントランス、バンケットルーム、お濠(ほり)沿いテラス、コンビニやカフェ、地下1階の職域食堂やクリニックモールにつながる結節点としての空間。1層吹き抜けの天井高は7m(写真:吉田 誠)
玄関ホールやオフィスエントランス、バンケットルーム、お濠(ほり)沿いテラス、コンビニやカフェ、地下1階の職域食堂やクリニックモールにつながる結節点としての空間。1層吹き抜けの天井高は7m(写真:吉田 誠)
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