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国内外で保存を求める声が上がった「ホテルオークラ東京 本館」の閉館から4年がたつ。名作ロビーを引き継ぎながら、2つの高層ビルと広場を持つ「オークラ東京」として9月にオープンを迎えた。

「オークラ プレステージタワー」のエントランス、中2階から見る。奥のロビーは、2015年に閉館した「ホテルオークラ東京 本館」のロビーを再現した(写真:吉田 誠)
「オークラ プレステージタワー」のエントランス、中2階から見る。奥のロビーは、2015年に閉館した「ホテルオークラ東京 本館」のロビーを再現した(写真:吉田 誠)
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全体構成・ロビーなど
明るさを増した再現ロビー

 1962年に開業した「ホテルオークラ東京 本館」は施設の老朽化などにより、2015年8月に閉館した。約4年の建て替え工事をへて19年9月、「The Okura Tokyo(以下、オークラ東京)」としてオープンした。

 敷地の北西には米国大使館が隣接して立つ〔写真1〕。虎ノ門や赤坂、霞が関にも近く、4駅3路線に囲まれる都内の一等地だ。東西で約19mの高低差があり、霊南坂や江戸見坂などの高台に位置する。

〔写真1〕中心に六角形の島
〔写真1〕中心に六角形の島
「ホテルオークラ東京 別館」から「The Okura Tokyo」を見下ろす。写真左下に「大倉集古館」、中央に「オークラ ヘリテージウイング」、右に「オークラ プレステージタワー」が写る。広場「オークラスクエア」の中央に、六角形の島を配置した(写真:吉田 誠)
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 2つの高層ビルは、地上1~4階部分が一体で、建築基準法上は1棟だ。東側の広場やホテルのエントランスは地上5階に当たり、それより上にタワーが2つに分かれて立つ〔写真2〕。

〔写真2〕すだれ状のスクリーン
〔写真2〕すだれ状のスクリーン
敷地に高低差があるので、地上5階のレベルにホテルのエントランスや広場がある。すだれのようなスクリーンと六角形の照明でエントランスを飾り、さりげなく日本らしさを演出した(写真:吉田 誠)
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 東に地上41階建ての「オークラ プレステージタワー」、北に地上17階建ての「オークラ ヘリテージウイング」、西南角に伊東忠太設計の私設美術館「大倉集古(しゅうこ)館」が並ぶ。それらに囲まれた空間は、「オークラスクエア」という名の広場にした。

 設計は、6社が参画する「虎ノ門2-10計画設計共同体」が手掛けた。基本計画、ロビーや広場などの設計は谷口建築設計研究所による。総事業費は約1100億円。建て替えの目玉がロビーの再現だ。建て替え前は建築家、谷口吉郎(1904~79年)が設計し、その再現に挑んだのが、息子の谷口吉生氏だった。