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空洞化が目立つ鉄道駅周辺に、にぎわいを取り戻す拠点となる図書館がオープンした。市民や高校生の生活動線をプランに取り込み、様々な活動を誘発し、本に親しむ人が増えることを目指す。
栃木県北部のJR東北本線・黒磯駅前に2020年9月1日、「那須塩原市図書館みるる」がオープンした。駅の真上を高速で走り抜ける東北新幹線の高架橋に沿って立つ鉄骨造、2階建ての建物だ〔写真1〕。
この建物の特徴は、形や勾配の違う多数の三角形を組み合わせた屋根に現れている。その真下には、屋根なりの起伏で三角形が連なる天井一面に、LVL(単板積層材)のルーバーを張った空間が広がる〔写真2〕。
「これまで本に親しんでこなかった市民をはじめ、誰にとっても分かりやすく、愛着を持ってもらえる図書館となるように、森の中で木立ちを見上げるような空間を提案した。さらに、実際の森のように多様な場所をつくり、様々な人たちの交流や活動を生む施設を目指した」。図書館の設計を手掛けたUAo(東京都渋谷区)代表の伊藤麻理氏はそう説明する。同社は、那須塩原市が実施したプロポーザルで、16年3月に設計者に選定された。図書館の設計に加えて、同市が並行して隣地で整備した駅前広場などにも、デザイン監修の立場で関わった。