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街に向けてともる鎮魂の光

 長さ160mの建物の2階部分は、白色のプレキャストコンクリートパネルで覆われている。そのうち、市街地に向いた北面のパネルには多くの小さな穴が開いており、夜になると光の粒が浮かび上がる〔写真11~13〕。穴の総数は1万8434個。施工中の2018年3月11日時点で警察庁が公表した東日本大震災の死者・行方不明者の人数だ(※)。穴の大きさは、パネルの外側が直径30mm、内側が同50mm。穴は内側が低くなるように勾配を付けて、白いパネル表面が雨垂れで汚れないようにした。

〔写真11〕2階部分を白いPCaパネルで覆う
〔写真11〕2階部分を白いPCaパネルで覆う
建物の2階部分を、白い帯のようにプレキャストコンクリート(PCa)パネルが巡る。市街地に向いた北面のPCaパネルには小さな穴が開いている(写真:吉田 誠)
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〔写真12〕躯体から60cm持ち出して固定
〔写真12〕躯体から60cm持ち出して固定
PCaパネルで覆われた建物の東端部。PCaパネルは幅60cmほどのメンテナンススペースを挟んでコンクリート躯体から持ち出しで固定している(写真:吉田 誠)
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〔写真13〕被害者を弔う明かり
〔写真13〕被害者を弔う明かり
日が暮れると、市街地に向けてPCaパネルの穴に光がともる。東日本大震災の死者・行方不明者の人数に相当する穴の数となるようにPCaパネルを製作した(写真:吉田 誠)
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 光源は、各パネルの裏面に4本ずつ取り付けたLEDライン照明。60cmほど離れたコンクリート躯体を白く塗装して反射させて、それぞれの穴に均質な光がともるようにした。

※最新の2019年9月10日付の警察庁広報資料も同数

コンクリートカーテンウオール正面図
コンクリートカーテンウオール正面図
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コンクリートカーテンウオール断面図
コンクリートカーテンウオール断面図
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発注者の声
脇坂 隆一氏 国土交通省都市局公園緑地・景観課 緑地環境室 国際緑地環境対策官
「海に祈る」に地元の厳しい声も

 東日本大震災後の2011年7月に国交省東北地方整備局に赴任し、この事業を含め、6年にわたり震災復興関連事業に携わった。自然災害を受けて国営公園をつくった例はほとんどなく、国としてどのような公園の在り方があるのかを有識者委員会などで検討した。

 設計者は、プロポーザルを実施して選定した。内藤さんの提案は、津波が来襲した海に向けて「祈りの軸」を引き、それと直交する「復興の軸」を設けて空間を制御し、統一感のあるデザインにまとめる素晴らしい内容だった〔写真14〕。

〔写真14〕高田松原も再生へ
〔写真14〕高田松原も再生へ
広田湾から見る公園の全景。今回オープンした部分の東西両側は、今後、岩手県が整備する。防潮堤の海側には、高田松原の再生に向けて松の苗木が植えられている。写真右奥は、復興が進む陸前高田の市街地(写真:吉田 誠)
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 こうした公園の整備は難しい面が多々ある。追悼施設がやり玉に挙がることもあり、「津波が来た海に向かって祈るとは、神経を逆なでするものだ」という厳しい声もあった。そうした声に対しては、ワークショップを重ねて住民同士で議論してもらうなどして理解を深めてもらった。

 事業主体が多く、様々な調整も必要だった。最終的には、国や県、市の事業を国営公園事務所が受託して一括発注する形をつくり、トータルにデザインされた公園を整備することができた。(談)


脇坂 隆一

わきさかりゅういち:1972年生まれ。94年東京大学農学部卒、建設省(現国土交通省)入省。2011年から同省東北地方整備局で震災復興関連事業を手掛ける。15年同局東北国営公園事務所長。18年から現職(写真:日経アーキテクチュア)