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被災者に思いをはせる場を

東日本大震災以降、国や被災県で多くの委員会に参加した設計者の内藤氏。どのような思いでこのプロジェクトの設計に取り組んできたのかを聞いた。

2019年10月19日の現地見学会で事業に対する思いなどを語った内藤氏(写真:松浦 隆幸)
2019年10月19日の現地見学会で事業に対する思いなどを語った内藤氏(写真:松浦 隆幸)
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 東日本大震災以降、国や県などの多くの復興関連の委員会などで三陸に通い続けてきた。様々な仕組みの中でやむを得ないことも少なからずあり、必ずしも復興がうまくいっているとは思えない部分もあった。

 そうした中にあって、せめて震災で亡くなった人たちに思いをはせる場所をつくりたいという思いをずっと抱いてきた。私としては、その思いがこの計画に込められている。計画的には「祈りの軸」と「復興の軸」という2つの軸がすべてだ。

美しい満月の夜の広田湾

 海沿いに高い防潮堤が整備されたため、この公園からは海が見えない。しかし、この場所に被災者を追悼・祈念する公園を国が整備する以上、訪れた人たちに海を見てもらわないというのはあり得ない。何としても陸前高田の海を見てほしいというのが、私の願いだった。そこで、祈りの軸の先にある防潮堤の上に「海を望む場」を設けることを提案した〔写真15〕。

〔写真15〕海に向かって思いをはせる
〔写真15〕海に向かって思いをはせる
防潮堤に設けた「海を望む場」。内藤氏は、この場所を訪れたら広田湾を見て、それぞれに思いを巡らせてほしいという(写真:吉田 誠)
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 通常、防潮堤には、その機能を阻害するような設置物は認められない。一時は諦めかけたが、関係者が思いを同じくして、努力してくれたおかげで実現の道が開けた。海を望む場は、この公園で最も大事な場所だ。施設に付随してこの場があるのではなく、この場があるから祈りの軸が成り立ち、そして施設がある。この場に限らず、今回の事業では、関係者の「何とかしたい」という強い気持ちが重なり合って、通常はかなわない多くのことが実現した。

 防潮堤から眺める広田湾はとてもきれいで、竣工前の満月の夜は本当に美しかった。公園では今後も整備が続き、完成すると柔らかな森の丘になる。ぜひ、多くの人たちに足を運んで、海と向き合ってほしい。(談)