フォーカス建築
目次
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木立のような建築で街に活力
「都市貢献」で足元の公共空間も一体整備 発注:阪神電気鉄道、阪急電鉄 基本計画・特区申請・基本設計:日本設計 設計・施工:竹中工務店
大阪・梅田のど真ん中で進んでいた再開発が終わり、超高層オフィスを含む大型複合施設が完成した。「梅田木立」を掲げ、地下街の活力を地上に吸い上げて街全体ににぎわいを広げる建築を目指した。
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RC柱をCLTで包む木質ビル
CLTが型枠、仕上げ材、構造材を兼ねる 発注:タマディックホールディングス 設計:坂茂建築設計 施工:大林組
鉄筋コンクリート(RC)柱とCLT(直交集成板)を組み合わせる新工法を採用したオフィスビルが登場した。設計を手掛けた坂茂氏は、「非常に優れた構造性能であることを確認できた」と振り返る。
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「原点」に立ち返る直接光
谷地に人を導く雨ざらしのギャラリー 発注:ベネッセホールディングス 設計:安藤忠雄建築研究所 施工:鹿島
香川県直島町のベネッセアートサイト直島内に、安藤忠雄氏設計の「ヴァレーギャラリー」が開館した。直島に安藤建築の第1号が完成してから30年目。若き日に見た「光」をテーマにした建築だ。
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のこぎり屋根の自然光で鑑賞
蔵の連なりを混構造で実現した「住宅併設美術館」 発注:西治 設計:KOMPAS 施工:青木工務店
アートギャラリーに住宅が付いたようなユニークな建物が完成した。北に向かって低くなるのこぎり屋根の開口から、柔らかい光を取り込む。
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街路空間で複合施設を一体に
姫路城の石垣に倣った大型レンガを内外に 発注:姫路市 設計:日建設計 施工:竹中工務店・神崎組・平錦建設JV
兵庫県姫路市は、姫路城などの観光とスポーツとコンベンションを連携させた国際都市を目指している。拠点として、ホールや展示場、会議室など、MICEの開催も視野に入れた大型複合文化施設が完成した。
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黒箱を貫く立体パッサージュ
正面つくらず四方の通路と大開口で地域結節点に 発注:大阪市 設計:遠藤克彦建築研究所、大阪市都市整備局 施工:銭高組・大鉄工業・藤木工務店JV
構想発表から約40年。2022年2月2日、大阪市北区で「大阪中之島美術館」が開館した。5階建ての内部をくりぬいたダイナミックな立体の「パッサージュ」が来館者を圧倒する。
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焼失前の記憶を未来へつなぐ
雁行配置の木造客室で光や風取り込む 発注:光風湯圃 べにや 設計:小堀哲夫建築設計事務所 施工:清水建設
2018年に火事で焼失した福井県あわら市の老舗旅館が、最新設備の宿泊施設としてよみがえった。木造・平屋で雁行(がんこう)配置の客室棟は、かつての記憶を継承しつつ、光と風による心地よい空間を生む。
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過大商業施設を身の丈に減築
既存施設を超高層住宅と一体で再々開発 発注:東京建物、西日本鉄道、三菱地所レジデンス 設計・施工:竹中工務店
築40年の大型商業施設の大胆な減築・改修と同時に、超高層住宅を増築し、新しい街に再構築した。既存施設は床面積を3分の1まで縮小、地元商店街との回遊性を高める商業施設に生まれ変わった。
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「首里織」をまとう創造型劇場
空間も運営も街に開いて市民活動を触発 発注:那覇市 設計:香山建築研究所・久米設計・根路銘設計JV 施工:国場組・大米建設・金城キク建設・ニシダ工業JV(建築)
那覇市の中心部に、沖縄伝統の織物を表現したコンクリートの外装パネルをまとう劇場が完成した。開放的な内部空間を持ち、質の高い公演などを通じて新しい文化芸術が育まれる創造型劇場を目指す。
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空港跡地に赤瓦の山並み
伝統を再構成、台風に耐える「集いの場」に 発注:石垣市 設計:隈研吾建築都市設計事務所・洲鎌設計室JV 施工:大成建設・大米建設・黒島組JV
旧石垣空港の跡地に赤瓦の新市庁舎が完成、2021年11月から供用を開始した。耐風性とメンテナンス性を考慮し、瓦のふき方や施設の構成を工夫した。
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建物の角2カ所を削り公共性
「天神ビッグバン」の先導役として存在感示す 発注:福岡地所 デザインアーキテクト:OMA 基本計画・基本設計:日本設計 実施設計・施工:前田建設工業
福岡市の中心市街地、天神に頭1つ抜きんでた大規模オフィスビルが誕生した。建物の角2カ所を削るデザインには、都市のにぎわいを内部に引き込む狙いが込められている。
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学びを深める「森の会所」
開放的な大空間で交流を促す研修施設が始動 発注:大和ハウス工業 基本計画・デザイン監修:小堀哲夫建築設計事務所 設計・施工:大和ハウス工業、フジタ
研修室やホール、共用部といった各空間が、街のようにひとつながりとなった研修施設が完成した。「森の会所」をコンセプトに、各所での研修活動が他者にも見聞きできるようにして交流を促す。
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共創促す幅120mの一室空間
働く場所を選べるように非均質な空間構成に 発注:コニカミノルタ 設計・施工:竹中工務店
コニカミノルタが成長戦略の柱としている画像AI/IoTの国際的な研究開発拠点がオープンした。パートナー企業との共有空間と、社員の専用空間を緩やかにつないだ一体的な空間構成で共創を促す。
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雨水を溝に浸透させ森を再生
樹状の建築とともに水循環を促す 発注:JST CORPORATION 設計:芦澤竜一建築設計事務所、ARCARI IOVINO ARCHITECTS 施工:SHIMIZU NORTH AMERICA
米国北東部にできた圧着端子メーカーの研究所では、「スウェール」と呼ぶ溝を敷地全体に巡らす。樹木が生育しやすい環境をつくり、起伏のある地形をはう樹状の建築とともに森の再生を図る。
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2つのむくり屋根で風景一変
内部は繊細な屋根架構で外観と違う印象に 発注:京都鳩居堂 設計:内藤廣建築設計事務所 施工:野口建設
老舗の「京都鳩居堂」が本店社屋を建て替えるとともに、通りの向かいに第2店舗を新設した。通りに対して同じ表情を持ちながらも性格の異なる両店舗が、商店街に新しい風景を生み出す。
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あえて制約課し、好奇心を刺激
築120年の木造を2つの階段で“迷宮”に 発注:安藤忠雄建築研究所 設計:安藤忠雄建築研究所・カクタ設計 施工:松田建設+丸順工務店(木工事)
コンクリート打ち放しを全く使わずとも、安藤忠雄氏初期の“迷宮的空間”を思わせる建築だ。安藤氏寄贈による「こども本の森」第2弾には、安藤建築の原点が浮かび上がって見える。
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本と過ごす居場所を創出
山をイメージした外観で駅前を活性化 発注:小牧市 設計:新居千秋都市建築設計 施工:鴻池組・三喜工務店JV(建築)
山をイメージした階段状の外観とテラス、4層吹き抜けの空間で、市民を駅前に引き寄せる。来館者は読書や学習、飲食などに自由な時間を過ごす。多様な居場所を提供する滞在型図書館だ。
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外観は不変、客室は一変
2室を1室に、水まわりの充実で居住性向上 発注:近鉄不動産、近鉄・都ホテルズ 設計:大林組(全体)、全日本コンサルタント(構造)、NAP建築設計事務所(客室監修) 施工:大林組
村野藤吾の代表作「佳水園」が、ホテルの大改修プロジェクトの一環でリニューアルした。外観は竣工当時の姿で保存再生。客室は大きく変わったが、随所に村野への敬意がうかがえる。
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復興シンボルの白い「家並み」
170mロビーに顔出す多様な文化施設 発注:石巻市 設計:藤本壮介建築設計事務所 施工:大成建設・丸本組JV(建築)
藤本壮介氏が設計した自身最大の公共建築が宮城県石巻市に誕生した。白い家並みのような形をした細長い建物に、複数の文化施設を埋め込んだ。
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高さ10mの滝を囲む立体庭園
水と緑で熊本らしさを表現した商業空間 発注:JR九州 設計:日建設計 施工:大林組
熊本市の玄関口である熊本駅前に2021年4月、大型商業施設「JR熊本駅ビル」が開業した。見どころは、雄大な熊本の自然を、7層の吹き抜け空間に表現した「水と緑の立体庭園」だ。