フォーカス建築
目次
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細道をすり抜け“森”に出会う
民が育てた大阪・中之島に刻む「建築の未来」 発注・設計:安藤忠雄建築研究所 施工:竹中工務店
自身が設計した文化施設を公共に寄贈する─。かつてそんな建築家がいただろうか。ここには、子どもを魅了する仕掛けとともに、「建築の未来」へのメッセージが込められている。
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街の流れを変える緑の「丘」
半屋外パサージュで表参道と竹下通りをつなぐ 発注:NTT都市開発 設計:竹中工務店、伊東豊雄建築設計事務所 施工:竹中工務店
表参道ヒルズなど商業施設のひしめく原宿エリアに、複合施設「ウィズ原宿」がオープンした。約8mの高低差がある地形に沿うように段状テラスを設け、半屋外通路を貫通させた。
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「ごみゼロ」を学ぶ地域の拠点
丸太材を生かし、“住民参加”で廃棄物を再利用 発注:上勝町 設計:NAP建築設計事務所 施工:北島コーポレーション
2020年5月30日の「ごみゼロの日」にオープンした、ごみ分別回収所を中心とする複合施設だ。設計者は施設の趣旨に合わせて、構造材に丸太を無駄なく使う他、内外装では廃棄物の再利用に努めた。
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歴史の重みを美術館の個性に
古いレンガやコールタールを展示空間に生かす 発注:弘前市(ミュージアム棟)、弘前賑わい創造(カフェ・ショップ棟) 設計:Atelier Tsuyoshi Tane Architects 施工:スターツCAM・大林組・南建設共同企業体(ミュージアム棟)、西村組(カフェ・ショップ棟)
築100年のレンガ倉庫を改修した美術館がオープンした。歴史の重みを感じさせる展示室が特徴だ。「シードル・ゴールド」の色をした屋根がきらめく。青森県弘前市の新たな文化拠点として期待される。
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庭を囲んで立体的につなぐ
細長い平面形状でランドスケープと融合 発注:天草市 設計:日建設計 施工:吉永産業・金子産業・大昌建設JV(建築)
2階建てながら全用途が外部と直接つながる公共複合施設が2020年4月、熊本県天草市に誕生した。ランドスケープと一体の建築を目指して行き着いたのが、中央の庭を細長い平面で包み込む構成だ。
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花びらプランで手厚く介護
職員の負担を軽減する放射状のユニット配置 発注:社会福祉法人桜木会 設計:白川直行アトリエ、waiwai 施工:熊谷建設工業
青森県むつ市に2020年3月、居室ユニットを放射状に配した特別養護老人ホームが開所した。職員の負担を軽減するように動線を徹底的に見直した結果、生まれたのが花びら形の平面構成だ。
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保存と活用の難題を両立
可逆性のある改修と大胆な改修をミックス 発注:京都市 基本設計:青木淳・西澤徹夫設計共同体 実施設計・施工:松村組
新型コロナウイルスの影響でオープンが延びていた京都市美術館が2020年5月26日に開館した。設計者は、「歴史的な建物の保存」と「現代の美術館としての活用」という矛盾する難題に挑んだ。
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風をはらむ“帆”を外装に
水都・大阪の歴史から海に浮かぶ帆船を着想 発注:ルイ・ヴィトン ファサードデザイン:青木淳建築計画事務所 設計・施工:大成建設
高級ブティックが立ち並ぶ大阪・御堂筋に、国内最大級の広さを誇るルイ・ヴィトンの店舗が誕生した。海に浮かぶ帆船の帆を思わせる外装のデザインは、海上交通都市、大阪の歴史から着想を得た。
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古墳のように池に浮かぶ
600mm厚のRC耐震壁で内外とも現しに 発注:松原市 設計:MARU。architecture、鴻池組 施工:鴻池組
ため池の多い大阪府松原市で2020年1月末、池の中に立つ新たな市立図書館が誕生した。600mm厚の鉄筋コンクリート(RC)耐震壁で覆い、内外とも断熱材や仕上げをなくしている。
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都市に開く美術館を複合
バルコニーで高層オフィス部に風を採り込む 発注:永坂産業・石橋財団 設計:日建設計 施工:戸田建設
東京・京橋で、低層部に美術館を持つオフィスタワーが完成した。隣の戸田建設本社ビルも建て替えが進み、街区を再編して広場などを充実させる。「100年後も通用する建物」を目指し、先進的な技術の導入に挑んだ。
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大屋根の下で各階を一望
全国2例目の県市一体型図書館がオープン 発注:長崎県 設計:佐藤総合計画・インターメディアJV 施工:戸田建設・上滝・堀内組JV(建築)ほか
長崎県のほぼ中央に位置する大村市に、県立と市立を一体化した図書館が開館した。1枚の大屋根で覆った吹き抜けの大空間に各フロアを段状に設け、館内の様子を一望できるようにした。
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M形アーチで魅せる無柱駅舎
渋谷の公道上空で電車を走らせながら新駅築く
発注:東京地下鉄 設計:メトロ開発、内藤廣建築設計事務所、東急設計コンサルタント 施工:東急建設・清水建設・鹿島JV東京メトロ銀座線の渋谷駅が、開業82年目にして生まれ変わり、2020年1月から運用を始めた。新しいプラットホームは、すべて形の異なる45本のM形アーチが連なる無柱の空間だ。
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木造シェルに設備を統合
パネル約2800枚を3Dモデルで最適配置
発注:Swatch 設計:Shigeru Ban Architects Europe、Itten + Brechbühl(ローカルアーキテクト) 施工:Blumer-Lehmann(木造)ほかスイス西部の町で、坂茂氏設計の巨大木造オフィスが完成した。建物を覆う木造グリッドシェルが特徴だ。与条件を3Dモデルで共有する「パラメトリック3Dプランニング」を活用し、構造と設備の統合を実現した。
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分棟配置で際立つ新旧の個性
既存建物や庭園を生かし新たな体験を創造
発注・設計・施工:竹中工務店京都・東山の料亭「山荘 京大和」の敷地内に、ホテル「パーク ハイアット 京都」が2019年10月に開業した。設計者は料亭の既存建物や庭園の在り方を読み解き、ホテルを分棟配置にし、互いを生かす景観をつくった。
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海に正対する祈りの建築
直交する2本の軸線でランドスケープを構成
発注:国土交通省東北地方整備局 設計:プレック研究所・内藤廣建築設計事務所JV 施工:西松建設(建築)ほか岩手県陸前高田市に、東日本大震災の犠牲者を追悼し、復興のシンボルとなる公園と施設がオープンした。全体の配置計画で設定した「祈りの軸」と「復興の軸」という2つの軸線に、復興の願いが込められている。
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美術品を守る現代の「蔵」
嵐山の風土と共存する日本画の鑑賞空間
発注:AYG 設計:安田アトリエ 施工:戸田建設京都の嵯峨嵐山地区に2019年10月1日、長い切妻屋根が特徴の私立美術館が開館した。設計者は、日本画などを守る「蔵」をイメージし、コンクリートの展示室を鉄骨架構で覆った。
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旧外壁を現代の技で継承
ヴォーリズのゴシック外壁残し、内装も一部復元
発注:大丸松坂屋百貨店 設計:日建設計、竹中工務店 施工:竹中工務店江戸時代から大阪・御堂筋に店を構える大丸が、戦前に完成したW.M.ヴォーリズ設計の本館を建て替えた。御堂筋側外壁を元の位置のまま保存しつつ、内側をまるごと新築し、構造安全性を確保する離れ業だ。
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保存を超えた再現ロビー
伝統美と広場のゆとりで都心に新たな高級感
発注:ホテルオークラ 設計:虎ノ門2-10計画設計共同体 施工:大成建設国内外で保存を求める声が上がった「ホテルオークラ東京 本館」の閉館から4年がたつ。名作ロビーを引き継ぎながら、2つの高層ビルと広場を持つ「オークラ東京」として9月にオープンを迎えた。
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ガラスと石の「箱」で街に刺激
谷口吉郎・住まい跡の記念館に「游心亭」を再現
発注:金沢市 設計:谷口建築設計研究所 施工:清水建設・豊蔵組・双建JV建築家の故・谷口吉郎が生まれた金沢市に、その子息である谷口吉生氏が設計した建築博物館がオープンした。この街が育んできた建築文化を守ると同時に、新しい息吹を吹き込む役割が期待されている。
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風雪受け流す翼形の大屋根
細い柱が「てんびん」で支える26mの跳ね出し
発注:青森県 設計:伊東豊雄建築設計事務所 施工:大林組・丸喜齋藤組・西村組JV青森市北東部にある県の運動公園で9月、伊東豊雄氏が設計した陸上競技場がオープンした。GRCパネルで覆った翼のような大屋根は、海から吹く強風や雪からフィールドを守る。