日本の建築計画学の先駆者である吉武泰水の元自邸「ヨシタケハウス」のコンバージョンだ。閑静な住宅地に立つ築30年の個人邸を4戸の共同住宅に用途変更。スケルトン分譲で新たな住人に引き継がれた。
「モジュールがしっかりした建物で、タイル割りまで本当にきれいだった」。そう語るのは駒田建築設計事務所(東京都江戸川区)の駒田剛司共同代表だ。今回の改修では、躯体と2つの住戸設計を手掛けた〔写真1〕。
スケルトン分譲という選択
ヨシタケハウスは地下1階・地上3階の二世帯住宅として1991年に竣工した。吉武の娘婿にあたる建築計画学者の長澤泰東京大学名誉教授が吉武と共に原設計を担当。1階にパーラーと呼ぶ社交場、2階に吉武家、3階には長澤家が改修前まで住んでいた。
改修は、長澤氏がヨシタケハウスの今後を、事業主となるアーキネット(東京都渋谷区)に相談したことに端を発する。躯体を解体して新築にすることも検討したが、「立地がよく希少価値のある建物を大事に残したかった」と同社の織山和久代表は語る。鉄筋コンクリート造の躯体の強度や耐久性を確認した上で、同社初のスケルトン分譲に踏み切った。
デザイン性の高いコーポラティブハウスを数多く手掛ける同社が、まず、土地と建物を買い取り、躯体の大規模改修を行う。買い取り再販住宅とすることで、買い手は各種税制優遇を受けられた。そのスケルトンを分譲し、個別のニーズに合う内装設計を可能にした。戸数は広さや販売価格を検討した結果、1階1戸、2階2戸、3階1戸、計4住戸とした。
駒田氏によると「共同住宅への変更は比較的容易にできた」という。原設計で中央にエレベーターがあり、各階をつなぐ階段室が独立して区画されていたためだ。