神奈川県海老名市郊外に立つ、築30年を超えるプレファブの賃貸集合住宅を改修した。南側のスペースを住人たち共用の作業場とし、一部住戸の裏庭にも屋外アトリエを設置。クリエーター向けのシェアハウスへ更新した。
「生活の中に制作のための余白空間があり、それを共有できるのがよい」。シェアハウスの住人で、現代美術作家のFさんはそう語る。
神奈川県内の米軍基地から車でアクセスが良いこの賃貸住宅は、1990年ごろに米軍の家族向けに建てられた〔写真1〕。長屋のテラスハウスは当時、日本人向けより賃料を高くできた。竣工時は計7戸だったが、南側だけ、2住戸の界壁を取り払って1戸にまとめる「2戸1」の改修を行い、計6戸としていた。その後、基地の縮小や駅近くのマンション増加で、一部が空き家になっていた。
オーナーのNさんは、先祖から受け継いだ土地家屋を手放さずに、投資額を抑えて改修する道を探っていた。そこで知人に紹介されたのが、設計集団のGROUPだった。
GROUPの井上岳共同代表から「クリエーターが集うシェアハウス」という改修コンセプトの提案を受けたオーナーは、「斬新な価値観に賭けてみよう」と設計依頼を決断し、改修に踏み切った。若いクリエーターの入居が増えて、現在はほぼ満室。都心と2拠点居住する住人もいる。