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桜並木に囲まれた角地に立つ平屋の住宅。建て主はここで工芸作品の展示と販売を行っている。店舗を兼ねたDK、ギャラリーにもなる中庭と、プライベートな居住空間の、3つの機能が平面と屋根形状に反映している。

 敷地は大分市との市境に近い戸建て団地の一角にある。約40年前の開発時に地域住民が植えた桜の木々が、今では高さ12mほどに成長している。東側は公園になっており、緑に恵まれた静かな環境だ。

 建て主は長く兵庫県のギャラリーに勤務していた。現在は大分との2拠点生活を送る。そのため、住居専用の面積はそれほど広くなくてよい。そこで、ほぼ正方形の平面を、南から、店舗兼DK(ダイニング・キッチン)、中庭兼ギャラリー、住居の順に3等分した。これら3つの空間に合わせて、勾配45度の切妻屋根を3つ連ねて架けている〔写真12〕。

〔写真1〕無柱空間の店舗兼DK
〔写真1〕無柱空間の店舗兼DK
DKを兼ねた店舗。建て主が家の中で最も長い時間を過ごす場所だ。写真正面奥がカウンター付きのキッチン。その上の三角形のハイサイドライトから桜並木が垣間見える。右側の庭が店舗へのアプローチ、左側の白い空間が中庭(写真:イクマサトシ)
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〔写真2〕木々に包まれるように立つ平屋建て
〔写真2〕木々に包まれるように立つ平屋建て
東の公園から見た外観。3つ並んだシャープな切妻屋根は遠くからも目立つ。道路に接する外壁は閉じ、中庭部分にはエキスパンドメタルの扉を付けて、防犯性とプライバシーを確保した(写真:イクマサトシ)
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 設計を手掛けた江藤健太アトリエ(大分市)の江藤健太代表は「敷地を囲んで連続する木々と、ジグザグに連続する屋根とが呼応するようなイメージで考えた」と語る。