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住宅が密集する狭小地で、生活空間を広く感じさせるにはどうすればよいか。普遍的な問いに対し、設計者は時間と共に部屋が変わって見える仕掛けとして、「光」「色・素材」「開口」の3つの切り口から解決策を提示した。

 約84m2の敷地に立つ地上3階建ての住宅に、夫婦と子ども1人が暮らす。建て主の一番の要望は、なるべく広く感じられるリビング・ダイニングを2階に設けたいというものだった。加えて、近隣の喧噪が気にならない静かな空間の確保と、高い防火性能である。そこで構造は、鉄筋コンクリート(RC)造とした。

 設計者である森清敏氏と川村奈津子氏が共同代表を務めるMDS(東京都港区)は、空間の広がりの設計に力点を置いた〔写真1〕。両氏は「同じ居室でも時間の移ろいによる日射の加減で、1つの大きな空間に感じるときもあれば、隣に別の空間があるように思えるときもある」と語る。「異なる空間体験ができれば、広がりを感じやすい」という仮説を立てた。その実証手段は、次の3つだ。

〔写真1〕たくさんの部屋から1つの大きな部屋へ
〔写真1〕たくさんの部屋から1つの大きな部屋へ
2階は十字架型の平面で、リビング・ダイニングは建物内で最大の距離を感じられる。同時に、色や素材、曖昧な開口で仕切った周囲の部屋を意識できる
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自然光の下では、天井高2230mmのダイニングと、吹き抜けがある天井高4750mmのリビングは別々の部屋と認識される。しかし、光の移ろいと照明で1つの部屋に見えるようにもなる(写真:西川 公朗)
自然光の下では、天井高2230mmのダイニングと、吹き抜けがある天井高4750mmのリビングは別々の部屋と認識される。しかし、光の移ろいと照明で1つの部屋に見えるようにもなる(写真:西川 公朗)
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