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京都市内の路地奥にある築100年超の4軒長屋を1棟に改修した。縦長の住戸が並ぶ空間構成や、古材を再利用していた既存建物の魅力を継承する。補修のために新たな部材を加える際は、新旧を融合させた。

 「表通りに立つ町家と比べ、路地奥の長屋は寄せ集めの部材を使った建物が多い」。そう語るのは、これまでに120件以上の京町家を改修してきた魚谷繁礼建築研究所の魚谷繁礼代表だ。

 蓮華蔵町の長屋もその1つ。既存建物は幅3m、奥行き約11mの2階建ての住戸が4軒並び、大きな入母屋屋根が架かった形態が特徴だ。改修以前から、他の町家の大黒柱や風車の材など古材が転用されていた。

 設計を手掛けたのは、魚谷代表と魚谷みわ子氏。両氏のこだわりは2つある。1つが、既存建物の構成を引き継ぐこと。もう1つが、これまで改修を重ねてきた既存建物に残る部材の良さを最大限に引き出すことだ。

4軒長屋の痕跡を残す

 建て主は、京町家を改修して活用することに興味を抱き、この長屋を購入した。異業種交流などに携わっていることから、住まいに加えて、イノベーションの場としてワークショップができる空間を要望した。

 魚谷両氏は、4軒長屋のうちの東側2軒分を吹き抜けのある開放的な空間に改修。庭とつながる大きな空間とした。床を庭側の瓦間と一段上がった板間に分けて、既存建物の2住戸の形跡を伝えている〔写真1~3〕。

〔写真1〕4軒長屋の構成を引き継ぐ1階の大空間
〔写真1〕4軒長屋の構成を引き継ぐ1階の大空間
4軒長屋のうち、東側2軒を使った大空間。改修前は、風車に使われていた部材や他の住宅の大黒柱などを転用するなど、様々な部材を集めた空間が魅力だった。既存の部材をできるだけ残しながら、必要に応じて新しい部材で補強して、その魅力を引き継いでいる(写真:浅田 美浩)
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〔写真2〕RCのコアを挿入
〔写真2〕RCのコアを挿入
4軒長屋のうちの1軒分に鉄筋コンクリート(RC)のコアを設けた。正面の和室の壁など、コアの外周壁には、他の建物で使用済みの型枠を再利用してザラッとした質感を出した(写真:浅田 美浩)
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〔写真3〕改修前の空間構成を床の素材で表す
〔写真3〕改修前の空間構成を床の素材で表す
吹き抜け空間を2階から見下ろす。瓦間(写真左)と板間(同右)で仕上げを違えているのは、4軒並んだ長屋の空間構成を表現している。玄関側の土間は、既存の長屋に土間があったことを継承している(写真:浅田 美浩)
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 西側2軒分を主にプライベートゾーンとした。そのうち西側から2軒目の住戸部分に鉄筋コンクリート(RC)のコアを挿入した。

 RCコアの上階には居間・食堂や厨房を配置。東側の吹き抜け空間に迫り出すように寝室と内バルコニーを設けている。2階は腰壁にして開口を設け、吹き抜けを介して外とのつながりが感じられるようにした。それと同時に、時間の経過を感じさせる木造軸組みを堪能できる〔写真4~7〕。

〔写真4〕2階を居住スペースに
〔写真4〕2階を居住スペースに
RCのコアの上に設けた居間(右)と食堂(左)。部屋の開放感を確保するため腰壁にして、窓を設けている(写真:浅田 美浩)
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〔写真5〕既存の部材を生かすデザイン
〔写真5〕既存の部材を生かすデザイン
既存の野地板を天井として、壁の木舞もそのまま残した。「既存建物の良さを生かしつつ、より良い状態に変えて残していくのが改修の在り方」と魚谷代表は説明する(写真:浅田 美浩)
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〔写真6〕箱階段を新設
〔写真6〕箱階段を新設
1階と2階をつなぐ箱階段を設置した。踊り場から庭の緑を一望できる場としている。窓は既存の建具を残した(写真:浅田 美浩)
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〔写真7〕既存の柱と新設のRC壁を堪能できるバスルーム
〔写真7〕既存の柱と新設のRC壁を堪能できるバスルーム
1階西側のバスルーム。吹き抜けとなっており、北側の地窓からは庭の緑が見える。写真左のすりガラス窓には、西日が射すと外の植物の陰影が浮かび上がる(写真:浅田 美浩)
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