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JR中央線の東小金井駅と武蔵小金井駅の間の高架下にある、全長が約350mの学生寮だ。高架下という横に長いプロジェクトで、住棟ごとに個性を持たせつつ統一感も出すため、かつて3人組だった設計者を起用した。

 「中央ラインハウス小金井」は、全109室の食事付き学生寮だ。住棟はC棟、L棟、H棟の3つに分かれる。

 設計者は、C棟がエアリアル(東京都新宿区、谷内田章夫共同代表)、L棟がarchitecture WORKSHOP(東京都港区、北山恒代表)、H棟が木下道郎ワークショップ(東京都渋谷区、木下道郎代表)。L棟には、全棟共用の食堂・ホールがある〔写真1、2〕。

〔写真1〕合計18の建物が一直線につながる
〔写真1〕合計18の建物が一直線につながる
東小金井駅から西に進むと最初に見えてくるC棟(写真:安川 千秋)
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H棟の一番東からL棟の方向を見た様子。L棟の住棟は2階建てで、奥に食堂・ホール棟がある。以前は建設地の半分(西側)が駐車場で、残り半分は使われていなかった(写真:安川 千秋)
H棟の一番東からL棟の方向を見た様子。L棟の住棟は2階建てで、奥に食堂・ホール棟がある。以前は建設地の半分(西側)が駐車場で、残り半分は使われていなかった(写真:安川 千秋)
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配置図
配置図
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〔写真2〕鉄道高架に負けないコンクリートの屋根を架ける
〔写真2〕鉄道高架に負けないコンクリートの屋根を架ける
食堂・ホールは、コンクリートの厚いスラブの下に空間がある構成にした。全体の建設条件として、高架橋と建物は構造上、縁を切り、JRとの協議で一定の離隔を確保した(写真:安川 千秋)
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 谷内田氏と北山氏、木下氏の3人は1978年から94年まで、設計事務所「ワークショップ」を共同主宰していた仲間だ〔写真3〕。今回、設計共同体として“再結成”した。ただし、別々に仕事をするようになってから長いため、設計思想や個性は異なる。そこで敷地を3つに分けて担当した。

〔写真3〕かつての設計チームが25年ぶりに集まった
〔写真3〕かつての設計チームが25年ぶりに集まった
左から北山恒氏、谷内田章夫氏、木下道郎氏。食堂・ホールを含む真ん中のL棟は「難易度は高いが、設計対象としては面白いので自分がやりたいと名乗り出た」と北山氏は話す(写真:安川 千秋)
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 事業者のJR中央ラインモール(東京都小金井市)は、中央線の三鷹駅から立川駅までの間を事業エリアとする。この区間の線路高架化に合わせ、駅周辺部に商業施設や沿線住民の生活支援施設を展開している。

 今回のプロジェクトでは、敷地の大半が住居専用の用途地域であることや、中央線沿線には大学が多いことから、学生向けの賃貸住宅をつくることにした。

 JR中央ラインモール開発本部マネージャーの関口淳氏は、元ワークショップの3人を起用した理由について、「高架下という限られた空間の付加価値を高められる、経験と実績を持つ設計者である」「大学で教壇に立つなど学生と接点がある」ことを挙げた。

 3人の協働により、全長350mの建物構成に変化をもたらし、一体感があるものにもなることを期待した。