複雑に入り組んだ14戸から成る重層長屋だ。部屋数を確保し、各室に個性をつけるため、平面空間ではなく高低差を積極的に取り入れた。施工会社などに構造の理解を促すため、模型ではなく3Dモデルで細部を説明した。
「komagome terrace(コマゴメ テラス)」の立地は都内のJR駒込駅から徒歩数分という、都心への通勤・通学に便利な環境だ。山手線沿いで、眼下に線路と電車が見える。
ただし、敷地は設計者泣かせ。典型的な旗ざお地で、旗部分の土地は一辺の長さがバラバラな五角形をしている。ここに木造3階建て・計14戸の賃貸住宅をどうつくるか──。
設計した藤井亮介建築研究所(東京都港区)の藤井亮介氏は、「敷地が不整形なので、通常の長方形プランは成り立たないことが初めから分かっていた」と話す。まずは敷地に最大限の建物ボリュームをつくり、それを分けていった。すぐに判明したのは「建物を単純に縦長に分けていったら、建築主に求められた部屋数を満たせない」(藤井氏)ということだ。
建築主のシマダアセットパートナーズ(東京都渋谷区)は均一な部屋ではなく、多様性がある空間設計を希望していた。SOHO使いまで念頭に置いた室内の区切りも求めた。
藤井氏は接する平面の凹凸を利用して、住戸数を最大化する割り方を練った。そうしてできたのが、立体パズルのような住戸プランだ〔写真1、図1~2〕。2019年3月末に完成した。