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合気道家が建てた道場兼住宅は、建設のプロセスも完成後の見た目も独特だ。施工中は木のアーチが立ち並び、完成後は建物全体を土壁が覆った。内部は手刀で仕上げた土壁が、凜(りん)とした空気を漂わせる。

 田園地帯が広がる滋賀県東近江市の集落の一角に、木造2階建ての「湖月庵」が立つ。ドーム形のフォルムに加えて、それを土塗りの仕上げで覆った素材感は、一見すると住宅とは分からないほど個性的な外観だ〔写真1〕。

〔写真1〕水田の脇にこんもりと立ち上がる湖月庵
西側から見た外観。完成後(写真:母倉 知樹)
西側から見た外観。完成後(写真:母倉 知樹)
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西側から見た外観。施工中の様子。木のアーチを並べて構造躯体とし、外壁を土塗り仕上げとした(写真:芦澤竜一建築設計事務所)
西側から見た外観。施工中の様子。木のアーチを並べて構造躯体とし、外壁を土塗り仕上げとした(写真:芦澤竜一建築設計事務所)
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 だが、周囲の景観を乱してはいない〔写真2〕。設計を手掛けた芦澤竜一建築設計事務所(大阪市)を主宰する芦澤竜一氏は、「周囲の山や田んぼに合わせたランドスケープとしての建築を考え、泥山のイメージで設計した」と話す。

〔写真2〕集落の風景に溶け込む
〔写真2〕集落の風景に溶け込む
湖月庵の遠景。湖月庵の素材感やフォルムが周囲の山や田んぼと調和している。写真の右に見えるのが「修験道修行の霊山」とされる赤神山(写真:母倉 知樹)
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 建て主は50代の女性、福井千珠子氏。住宅に道場を併設し、合気道や、フェルデンクライスというエクササイズの教室を開く。生活と道場の距離感が近く、稽古以外の場面でも道場生と交流しやすいと言う。