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曲面を描く屋根が、四角いプレファブを覆う。軒下は開放的で回遊性が高く、広い縁側のようだ。西沢立衛建築設計事務所(東京都江東区)とミサワホームの共同設計住宅の第1弾で、全国展開を視野に入れる。

 愛知県にある「森本邸」は、リニモ(愛知高速交通)沿線の駅から徒歩数分の緑豊かな場所に立つ。建て主は、30代の夫婦と子ども2人だ。

 妻は「家づくりが夢だった」と語る。設計者を探していたところ、西沢立衛氏の代表作の1つ「森山邸(2005年竣工)に衝撃を受けた」という。

 とはいえ、「西沢氏に直接連絡するのはハードルが高かった」。そこで「有名建築家と建てる住まい」を掲げるミサワホームのプロデュース事業「Aプロジェクト」を通じて、西沢立衛建築設計事務所に設計を依頼した。Aプロジェクトは1995年の開始以来、約150棟の実績がある。

工業化住宅に“スカート”屋根

 西沢氏のアイデアは、ミサワホームの住宅の特徴を生かしたものだった。プレファブの「木質パネル接着工法」を構造のコアとし、周囲を在来の屋根で囲む“スカート”案だ〔写真12〕。

〔写真1〕曲面の屋根をまとうプレファブのコア
〔写真1〕曲面の屋根をまとうプレファブのコア
ミサワホームの標準的な木質パネルで、中央に2階建てのコアをつくり、四周に打ち付けた集成材の曲げ梁から軒を伸ばして曲面の屋根を設けた(写真:車田 保)
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〔写真2〕四周どこからでもアプローチできる縁側
〔写真2〕四周どこからでもアプローチできる縁側
北西側の生活道路側に面し、ワークテラス(書斎)や和室とつながる縁側を設けた。「周囲からの視線を意識しつつ、きちんとした暮らしができる」と建て主は語る(写真:車田 保)
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 細い心材と断熱材を合板で挟んだ木質パネルは、ミサワホームの標準仕様である。それを中央の2階建て部分に使い、2日で上棟した。

 それに対し、外周のスカート屋根は数カ月の施工期間を要した。木質パネルの四周に円弧を描く集成材の梁を取り付け、そこから垂木を伸ばして軒下空間をつくった〔写真3〕。

〔写真3〕閉じたコアから家の外まで複数の層を成す空間構成
〔写真3〕閉じたコアから家の外まで複数の層を成す空間構成
木質パネルのプライバシーを保つ空間から、開放的な下屋を経て外につながる。曲げ梁はパネルの内側からボルトで打ち付けた(写真:車田 保)
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 自由曲面で多様な場をつくる軒下をなるべく簡易に施工できるよう、4本の曲げ梁以外は全て直線で構成〔写真4〕。この形を実現するため、構造設計者や施工者と3次元CADや模型で検討を重ねた。複雑な形を実現するには、費用や施工の負担が大きくなりがちだ。コアに既存の木質パネルを採用して、それを減らした。

〔写真4〕放射状の垂木で動きのある下屋に
〔写真4〕放射状の垂木で動きのある下屋に
スギの集成材から伸びる垂木は直線だが、それぞれが少し角度を持つことで下屋の表情を豊かにしている(写真:車田 保)
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