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東京都心の住宅街にある旗ざお敷地。敷地面積は約45m2で、旗部分だけだと3m×6m。これを生かす突破口は、ライフスタイルに寄り添う明快な選択と集中。そして寸法や採光などの細やかなスタディーだった。

 住宅の土地を探していた建て主、20代のM氏夫妻は、東京都心の一等地に値ごろな場所を見つけた。実物を見て「狭い」ではなく、自分たちの生活スタイルに「十分」と感じた。

 図書館や公園なども近く、生活の機能を住宅だけで完結させず、必要に応じて外に出ればよいと考えた。

 設計はSALHAUS(東京都千代田区)に依頼した。独身時代に住んでいた「西麻布の集合住宅」(東京都港区)を同社が設計しており、「モダンだけど有機的な質感で、自身の感性に合っていた」とM氏は言う。

屋外利用で街と融合

 SALHAUSの安原幹共同代表は、「その敷地で最大限に快適な生活をするための形式を意識し、土地の可能性を掘り起こしたかった」と、住宅設計への姿勢を振り返る。

 「中目の旗竿」では、旗ざお敷地のさお部分までを活用する屋外階段と屋上庭を提案〔写真1~3〕。もともと建て主は、「愛犬のための屋外空間」や「緑に囲まれた家」を要望していた。そのため、屋外を使った生活のイメージも共有しやすかった。

〔写真1〕法改正で開放的な屋外階段が実現
〔写真1〕法改正で開放的な屋外階段が実現
接道幅約2mの旗ざお敷地に立つ。2020年4月施行の改正建築基準法施行令で敷地内通路幅が緩和されたため、敷地のさお部分に、屋外階段を設けやすくなった。亜鉛メッキの鉄骨階段は工場溶接して搬入。建て主は、踊り場のポールにツタ系植物を繁茂させることを狙っている。1階は独立した「はなれ」として使う(写真:高橋 菜生)
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〔写真2〕屋上に出した縁側と露天風呂
〔写真2〕屋上に出した縁側と露天風呂
建物は混構造で、1、2階が鉄筋コンクリート造、3階が木造。寝室から屋上庭へ出る場所に、縁側とヒノキの露天風呂を設置した。少しでも3階天井の高さを出すため、棟梁を傾けている(写真:高橋 菜生)
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〔写真3〕愛犬も遊べる屋上庭
〔写真3〕愛犬も遊べる屋上庭
「緑に囲まれた家」という要望に応えた屋上庭。料理を趣味とする夫は、ハーブを育てている(写真:高橋 菜生)
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配置図
配置図
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 屋外階段は、都市の隙間を回遊するかのような感覚をもたらす。2020年4月施行の改正建築基準法施行令で、階数が3以下で延べ面積200m2未満の建物は、敷地内通路幅の制限が1.5m以上から0.9m以上に緩和された。この敷地のさお部分は幅員約2mだったため、その緩和のおかげで屋外階段を設置しやすくなった。SALHAUSの日野雅司共同代表は、「法改正で、さお部分の利用の可能性が広がった」と話す。

 一方、屋上庭には、浴槽を出した。その分の屋内面積を確保するだけでなく、露天風呂を欲しがっていた建て主の望みもかなえた。