部分断熱の家(千葉県野田市)
旧家を高断熱化し住み継ぐ
コストの制約が生んだ現代と歴史の“同居” 設計:中川純+戸邉亮司+永井拓生 施工:シグマ建設
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冬の生活が厳しい築90年の住宅で、部分的に断熱空間をつくった。同時に、長く大切にされてきた和室などは非断熱のまま残し、新旧が共存する住宅に再生した。“部分”に着目した背景にはコストの制約があった。
「冬は帽子をかぶって眠り、朝起きると吐く息が白かった。台所にいると身体が芯から冷えた。それがこんなに快適な家になるなんて思いもしなかった」。築90年近くの家に集まった建て主の家族は、いまや過去のものになった冬のつらい生活を、半ば懐かしむように口々に語る。
こんな言葉も聞かれた。「和室や縁側は今も冬は寒いけれど、その代わり、改修を機にオリジナルに近い姿に戻った」〔写真1、2〕
〔写真1〕非断熱・高断熱の空間が同居
約90年前の竣工時から大切に守られてきたたたずまいを残した和室。手前の2室は非断熱のまま。奥に見えるガラスの木製建具の向こうは、改修で設けた高気密高断熱化したダイニング(写真:安川 千秋)
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〔写真2〕記憶が刻まれた縁側は非断熱で再生
改変され、傷みも目立っていた縁側は、家族の記憶に残るオリジナルの姿を尊重して改修した。奥にある和室とともに縁側も非断熱としたので、新調した木製建具は単板ガラスとした(写真:安川 千秋)
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