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室内に「熱帯雨林」のある家が完成した。家族5人と大きなトカゲ、複数のペットが一緒に暮らす。暖かい場所を好むトカゲのため、庭を家の中央に配置。土壁で囲って断熱や蓄熱の性能を高め、十分な採光も確保した。

(写真:生田 将人)
(写真:生田 将人)
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 地上2階建ての木造住宅の真ん中に、トカゲが暮らせる吹き抜けの室内庭がある。そんな驚きの家が完成した。庭には樹木が伸び、足元には池(水場)がある。ガラス張りの室内庭はもはや、動物園か水族館のようだ。

 爬虫(はちゅう)類に魅(み)せられた建て主は長年、マンションでトカゲなどを飼育してきた。だが自然に近い環境で育てたいという夢をかなえるため、友人に設計依頼の声を掛けた。その相手がMARU。architecture(東京都台東区)共同主宰の高野洋平氏だった。

 飼っているホカケトカゲはアジアの熱帯に生息する珍しい種類で、寒さが苦手だ。高野氏は室内庭を外気から離れた家の中央に配置し、周りを台所や食堂、居間などで囲むプランを考えた。家族は庭の周りの部屋でくつろぎ、ご飯を食べる。時折庭を眺め、窓から外を見て過ごす。

 断熱や蓄熱を促すため、庭は2層分の高さがある土壁を「井」の字形に立てて囲った〔写真12〕。庭は井の字の中心にある〔図1〕。建具にも断熱性の高いものを採用。「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」(HEAT20)の推奨する断熱性能グレード「G2」相当を満たした。

〔写真1〕室内を貫く4枚の土壁が外まで飛び出す
〔写真1〕室内を貫く4枚の土壁が外まで飛び出す
採光や通風、室内からの視線の抜けを検討した結果、入り組んだ形の家になった(写真:生田 将人)
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〔写真2〕方角によって家の見え方が全く違う
〔写真2〕方角によって家の見え方が全く違う
玄関や駐車場がある家の北東側。突き出た土壁の方向や、土と木とアルミ亜鉛合金めっき鋼板を用いた仕上げ材の使用比率で、家の表情が南側とかなり違っている(写真:生田 将人)
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〔図1〕日射の方角を考慮した土壁で断熱や蓄熱
〔図1〕日射の方角を考慮した土壁で断熱や蓄熱
土壁の向きは冬至の太陽軌道に合わせて決定した。寒い日にも直射光を最大限採り込み、土壁で蓄熱する。眼下に箕面川が流れる高台に敷地はある。南側に遮るものはない。日当たりと眺望は抜群だ
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