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一室空間で家族の距離感設計

 内部は2層吹き抜けの大空間になっている。断熱を優先し、開口は大きくせず横連窓とし、南北にトップライトを設けて採光している。天井には三角形のディフューザーを設け、光を部屋中に拡散させている。「日照時間が短い冬でも、1日の長い時間を過ごす室内を明るく保つため、壁色は白を主体とした。それでも冷たい印象にならないよう、緑や黄色、オレンジの差し色を加えた」(Eurekaの佐野哲史共同主宰)〔写真3〕。

〔写真3〕一室空間を柔らかな光で照らす
〔写真3〕一室空間を柔らかな光で照らす
寒冷地のため大きな開口は設けず、トップライトで採光する。直射光にならないよう、三角形のディフューザーで光を拡散させている。1階のキッチン・ダイニングとリビングは、600mmの段差を付けて緩やかに分節した(写真:大倉 英揮)
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 夫婦と3人の子どもの5人家族が同じ空間で一緒に過ごせるようにしたいというのが、建て主の要望だった。そこで上下階のどこにいても、お互いの気配を感じやすくした。北側のリビングは天井の高さを抑え、手すりは縦桟のみの開放的なデザインを採用。1~2階の距離感を縮めて、リビングとロフトを密接にしている。

 一方、玄関からつながるキッチン・ダイニングには、ゲストを招き入れることがある。こちらは天井を高くし、2階のプライベート空間であるセカンドリビングと距離を取った。壁状の手すりを設け、視線も遮っている〔写真4〕。

〔写真4〕壁状の手すりでプライバシーを確保
〔写真4〕壁状の手すりでプライバシーを確保
玄関から近いキッチン・ダイニングには、客人を招くことがある。家族のプライバシーが高い2階とは、壁状の手すりで仕切った。医療従事者らしく、玄関脇には衛生に配慮して手洗いを設けている(写真:大倉 英揮)
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 一室空間でありながら、キッチン・ダイニングとリビングで段差がある構成にすることで、「干渉されにくい距離感を保ちつつ、家族がどこにいてもお互いの存在を把握でき、つながりを感じられる」と建て主は喜ぶ。2階のスタディースペースは、建て主が子どもと一緒に学ぶための場になる予定だ〔写真5〕。

〔写真5〕家族で一緒に学べるスタディースペース
〔写真5〕家族で一緒に学べるスタディースペース
2階の南側にあるスタディースペースは、駐車場にした無柱空間の上にある。壁面に斜め材を入れることで、垂れ下がらないようにしている(写真:大倉 英揮)
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 屋根の傾斜で落雪を受ける東西と北のマウンドには、植栽を設けた。方位によって違う植物を植えている〔写真6〕。

〔写真6〕植栽で家に彩りを添える
〔写真6〕植栽で家に彩りを添える
駐車場の奥にある、植栽を施した「エントランスステージ」(写真:大倉 英揮)
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落雪を受ける東西と北のマウンドには、内部空間との関係性や日当たりを考慮し、方位によって異なる木々を植えた(写真:大倉 英揮)
落雪を受ける東西と北のマウンドには、内部空間との関係性や日当たりを考慮し、方位によって異なる木々を植えた(写真:大倉 英揮)
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外構・造園は、荻野寿也景観設計が担当