全3687文字
PR

棚が一斉に倒れ、食器が大量に落下──。2021年12月から22年1月にかけ、首都直下地震における室内空間被害を想定した振動実験が行われた。16年の熊本地震では家具の転倒や非構造部材の落下による人的被害が多発している。対策は待ったなしだ。

10階建て最上階の被害再現
食器が散乱、歩けない 家具固定金物も破断した

 今回の実験は、防災科学技術研究所が主体の研究グループが、文部科学省事業「首都圏レジリエンスプロジェクト」の一環として2021年12月から2カ月にわたって実施した。防災科研・兵庫耐震工学研究センター(兵庫県三木市)の3次元振動実験施設(通称:E-ディフェンス)を用いた〔写真1図1〕。

〔写真1〕室内空間ごと1000gal超で揺らす
〔写真1〕室内空間ごと1000gal超で揺らす
2022年1月21日に実施した振動実験では、大きな揺れで家具類が一斉に転倒した。応答解析に基づき10階建て最上階の揺れを再現、最大加速度は1000galを超えた。一連の実験は防災科学技術研究所・兵庫耐震工学研究センター(兵庫県三木市)の3次元振動実験施設(通称:E-ディフェンス)で行われ、報道向けに公開された(写真:池谷 和浩)
[画像のクリックで拡大表示]
〔図1〕実験の概要
〔図1〕実験の概要
強固な3基の鉄製実験ユニットを振動台に載せ、室内空間を仕上げた。図は22年1月21日の実験時のもので、高層住宅やオフィス、サーバールームの室内を再現した(資料:防災科学技術研究所)
[画像のクリックで拡大表示]

 テーマは、非構造部材や家具・什器など、室内空間の構成要素全体の危険性の検証だ。熊本地震では人的被害の半数が家具・什器や家電製品の転倒、非構造部材の落下などに起因しており、室内空間全体の安全性検証法の確立が急がれる〔図2〕。

〔図2〕熊本地震で目立った室内受傷
〔図2〕熊本地震で目立った室内受傷
熊本地震における救急出動記録(出動数211件)に基づき、防災科研が独自集計した室内空間での受傷原因。半数は家具・家電製品の転倒や非構造部材の落下、ガラスなどの破片散乱が原因だった(資料:防災科学技術研究所)
[画像のクリックで拡大表示]

 報道向けに公開された実験は計2回。10階建ての最上階を想定し、住宅内部やオフィス空間を再現した実験は22年1月21日に実施した。