小田急小田原線の線路跡地に商業施設やホテルなどが建設され、にぎわいが生まれている。施設間の回遊性を高めるのに一役買っているのが、帯状に配置した緑化通路だ。緊急車両の通行路として防災面の役割も果たす。
「シモキタじゃないみたい」。東京都世田谷区にある小田急電鉄の下北沢駅南西口を出てすぐの場所に、緑に囲まれた遊歩道と野原が続く〔写真1〕。都市にある駅前広場とは思えない光景に、人々が驚いていた。
ここは小田急小田原線の連続立体交差と複々線化の事業に伴う鉄道地下化で生まれた線路跡地だ〔写真2〕。対象は世田谷代田─下北沢─東北沢の3駅間の約1.7km区間〔図1〕。2022年5月に一部の公共空間を残して街開きした。区が公共空間の通路や広場を、小田急電鉄が商業施設やホテル、住宅、広場などをそれぞれ整備した。
「地下化によって創出された土地は区にとって貴重な存在。北沢周辺は住宅などが密集し道路が狭く、災害対策が課題だった。災害時は緊急車両の通行路として活用でき、日常使いもできる駅間通路を整備した」。区北沢総合支所拠点整備担当課の岸本隆課長は、こう説明する。
「緑地広場」の基本設計を担当したランドスケープデザイン事務所のフォルク(東京都世田谷区)の三島由樹代表は、次のように話す。「景観を楽しむような庭園ではなく、人々が直接、手に触れたり、植物と人の営みの循環が感じられたりするワイルドな緑の空間とした」〔図2、写真3〕
緑地広場に隣接する、すり鉢状の地形を生かした「シモキタ雨庭広場」も人気のスポットだ。
「敷地の高低差は約3m。最も低いくぼ地状の植栽地に、周囲に降った雨を集めて地下に貯留、浸透させる雨庭を設けた」(区みどり33推進担当部公園緑地課の向吉真央氏)