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中心市街地の活性化に向け、広場や公園を整備してにぎわいを生む事例が目立っている。可動式のガラス大屋根、照明を組み込んだ大きなリング、木の葉形のパーゴラ──。シンボル性を持つ“屋根”を中心に据え、人が集う場をつくることがポイントとなる。野外でクラシックコンサートを開けるといった付加価値も重要だ。

1 祝祭の広場(大分市)
  移動可能な大屋根でにぎわい呼ぶ

 2019年秋に開かれたラグビーワールドカップ(W杯)2019日本大会の期間中、大分市の「祝祭の広場」には延べ35万人余りが来場した。大分市が、市内で開催される5試合を含むパブリックビューイングなどの関連イベントを実施した。

 「大分に祝祭の広場という新しい集いの空間ができたことを、広く認知してもらう機会になった」。そう振り返るのは、整備を担当した大分市都市計画部まちなみ企画課景観推進担当班専門員の立花博信氏だ。

 祝祭の広場は、JR大分駅前の中心市街地に19年9月、オープンした。11年1月に閉店した大分パルコの跡地を市が17年12月に取得し、多目的に使える街なかの広場として整備した。4300m2余りの広場にはV字柱で支えられた門型の大屋根が大小2枚架かる〔写真12〕。足元に付いた車輪で約67mのレール上を移動できる。港湾施設の岸壁で見かける大型の門型クレーン「ガントリークレーン」をモチーフにした建築物だ。

〔写真1〕敷地内を移動できる大屋根
〔写真1〕敷地内を移動できる大屋根
ガラスを張った2枚の大屋根をV字形の柱で支える。柱の足元には走行装置があり、レール上を移動できる。大屋根は鉄骨造、1時間耐火構造の耐火建築物(写真:イクマサトシ)
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〔写真2〕市街地活性化の一環で整備
〔写真2〕市街地活性化の一環で整備
近年、再整備された大分駅まわりのにぎわいが増した半面、駅から歩いて数分の中心市街地への人の流れが減少している。中心市街地の回遊性や滞留性を高める一環で、大分市は祝祭の広場を整備した(写真:イクマサトシ)
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当初はクレーンで設計

 設計はaat+ヨコミゾマコト建築設計事務所(東京都新宿区)ほか4社による設計JVが手掛けた。大分市が実施したプロポーザルで18年3月に設計者に選ばれた。「大分の港湾地区にあるガントリークレーンの動きを見ていて面白いと思った。プロポーザルの要件で屋根が必要とは書かれていなかったが、クレーンのような動く屋根は集客につながり、様々な使い方にも対応できると考えた」とヨコミゾマコト氏は振り返る。

 その言葉通り、ヨコミゾ氏ら設計JVが当初、設計したのは大型の門型クレーンだった。大型クレーンは建築物ではなく、設置や運用は労働安全衛生法に基づく。

 しかし、設計をほぼ終えた18年6月に大阪府北部地震や各地の豪雨災害が発生。広場での利用を想定していない大型クレーンの安全管理などに不安を抱いた大分市は、急きょ方針を転換した。安全を担保できる建築物として一から設計をやり直し、現在の形になった。

 移動可能な2枚の大屋根は、建築基準法上の「集会場」に当たる。車輪を含む足元の走行装置は、クレーンメーカーの協力を得て製作した。これらは建築設備には相当しないので法定点検などメンテナンスの義務付けはなく、操作のための資格も必要ない〔写真34〕。

〔写真3〕ソーラー電力で67mを5分で移動
〔写真3〕ソーラー電力で67mを5分で移動
大屋根は、約67mあるレールの端から端までを5分程度で移動する。動力は、屋根の南面に取り付けたソーラーパネルによる電力だけで賄う。建築確認(計画通知)は、面積が最大となる現在の位置で申請した(写真:イクマサトシ)
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〔写真4〕柔軟に使える「広場」として整備
〔写真4〕柔軟に使える「広場」として整備
都市公園法に基づく「公園」ではなく、より運用の自由度が高い「広場」として整備した。そのため大分市は「祝祭の広場条例」によって利活用の方針や使用のルールなどを定めている(写真:イクマサトシ)
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 ただし、実際に動かしたことはまだない。建築物の移動は“曳き家”と同じで「建築確認(計画通知)」が必要なため簡単には動かせないからだ。

 「短期間でラグビーW杯開催までに完成させるのに精一杯で、移動の手続きを整える余裕がなかった。その後、現行法規の範囲内で、通常の計画通知より簡便な手続きで動かせる仕組みづくりを模索している。しかし、敷地内を移動する建築は前例がなく苦心している」と、大分市の立花氏は明かす。

立面図
立面図
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基礎まわり断面詳細図
基礎まわり断面詳細図
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配置・平面図
配置・平面図
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大型屋根断面図
大型屋根断面図
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祝祭の広場

  • 所在地:大分市府内町1-1-1
  • 主用途:集会場
  • 地域・地区:商業地域、防火地域、準防火地域
  • 建蔽率:14.84%(許容80%)
  • 容積率:17.29%(許容558.53%)
  • 前面道路:西36.4m、南20m(一部16.3m)
  • 敷地面積:4309.29m2
  • 建築面積:639.37m2
  • 延べ面積:745.27m2
  • 構造:鉄骨造(大型屋根)、鉄筋コンクリート造(トイレ棟)
  • 階数:地上1階
  • 耐火性能:耐火建築物(1時間耐火構造)
  • 基礎・杭:独立基礎(大型屋根)、ベタ基礎(トイレ棟)
  • 高さ:最高高さ11.72m(大型屋根)・4.05m(トイレ棟)、軒高11.15m(大型屋根)・3.00m(トイレ棟)、天井高10.478m(大型屋根)・2.78m(トイレ棟)
  • 発注者:大分市
  • 設計・意匠伝達者:建設コンサルタントサニー・ヒュマス・ヨコミゾマコト建築設計事務所・都市企画工房JV
  • 設計協力者:アラップ(構造・設備)、二葉積算(積算)、岡安泉照明設計事務所(照明)、ダイアグラム(サイン)、ヤクテツ(走行装置)、kaa.(設計協力)、まちなか広場研究所(企画運営)
  • 監理者:大分市
  • 施工者:新成建設(大型屋根、トイレ棟)、ANAI(大型屋根サッシなど)
  • 施工協力者:松栄電設工業(電気)、MSA(排水)、ハザマ設備(空調・衛生)、豊樹園(造園)、ANAI(舗装)
  • 運営者:大分市
  • 設計期間:2018年3月~12月
  • 施工期間:2019年2月~8月
  • 開業日:2019年9月7日
  • 総工費:5億6006万2846円
  • 工費内訳:4億1903万9970円(建築)、1690万2108円(空調・衛生)、4707万9792円(電気)、431万7667円(排水)、4230万6104円(舗装)、2404万1317円(造園)、637万5888円(付帯工事)

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