政府の緊急事態宣言が3月21日までで全面解除されたが、新型コロナウイルスへの警戒は続く。感染者が自宅療養する場合、家庭内感染を防ぐにはどうすればよいか。日本建築学会のWGがまとめた対応方法を紹介する。
日本建築学会の「換気・通風による感染対策WG」(以下、WG)は、家庭内感染を防ぐための「自宅療養室」を簡易につくる方法をウェブサイトで公開している。ビニールカーテンを間仕切りに使い、室内を「陰圧」に保つ状態をつくり出すことで、ウイルス拡散を防ぐ〔写真1〕。東京理科大学の倉渕隆教授が監修し、東京工芸大学の山本佳嗣准教授が実施した既存住宅での実証実験を基にしている。
「陰圧管理」とは、医療施設などで導入されている感染対策だ。空気は気圧の高いところから低いところに流れる。気圧差をつくり出すことで、清浄ゾーンから感染者のいる汚染ゾーンへと一方向に空気が流れるように制御できる〔図1〕。この方法を住宅に応用し、療養室ゾーンを風下側にする状態を確保する。
WGが示した手法は次のようなものだ〔図2〕。まずは、住宅の廊下を2重のビニールカーテンで仕切る。健常者が過ごす清浄ゾーンと感染者が過ごす療養室ゾーンを明確に区画分けする。トイレが複数ある場合は、療養室ゾーンにトイレを組み込むことが望ましい。トイレが共用では、接触感染や飛沫感染のリスクが高まるからだ。
2枚のカーテンの間は緩衝空間となる。物の受け渡しや人の出入りの際でも、カーテンを片方ずつ開け閉めすることで、療養室ゾーンの陰圧状態を保てる。開け閉めが必要な箇所以外、空気が漏れないように養生テープなどでビニールと壁の隙間を塞ぐことが必要だ。