野地板にMDF(中密度繊維板)を採用するだけ。通気層は瓦下の隙間を活用する──。従来工法の常識を覆す屋根断熱の新工法が登場した。売りは施工性とコスト。実大実験では、その通気効果が確認された。
軒先で煙幕花火に火をつけてしばらくたつと、屋根ふき材の瓦の重ね代から煙が大量に出てきた。屋根断熱の新工法の通気性能を、試験棟で披露したときの様子だ〔写真1、2〕。
新工法を開発したのは、瓦の製造と屋根の結露調査などを手掛ける神清(愛知県半田市)。一般的な屋根断熱工法と異なり、瓦下の“隙間”を通気層として活用するのが特徴だ。野地板に湿気を通しやすいMDF、防水シートに透湿ルーフィングを採用。野地板と断熱材の間の通気層をなくした。室内の湿気を野地板と防水シートを通して、瓦下の隙間から抜く仕組みだ。
「野地板の“外側”に通気層を設けるという逆転の発想で新工法を開発した。屋根断熱工法の様々な弱点をなくすことができる」と、神清の神谷昭範常務は説明する。
在来工法よりも材料費が安い
屋根勾配に沿って断熱材を配する屋根断熱。近年採用する住宅が増えている一方で、通気不良で野地板に結露やカビが発生するトラブルが目立ってきた〔図1〕。屋根断熱では野地板と断熱材の間に通気層を設けるのが一般的だが、隅々まで空気が通るように施工するのは難しく、手間がかかる。適切に施工しても野地板の外側が乾きにくい弱点があり、劣化を早める恐れもあった。
新工法のメリットは、施工性の良さと安価なコストだ。野地板と断熱材の間に設ける通気層が不要なので、施工性が格段に良くなる〔図2〕。割高なMDFを採用したことによる増額分も吸収できる。試算では、面積が100m2の切妻屋根の場合、材料費が従来工法より7万6300円安くできた。「特別な措置を施さなくても、瓦下にはおのずと隙間ができる。MDFと瓦の組み合わせだからこそ、コストメリットが得られると分かった」と神谷常務は話す。