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野地板にMDF(中密度繊維板)を採用するだけ。通気層は瓦下の隙間を活用する──。従来工法の常識を覆す屋根断熱の新工法が登場した。売りは施工性とコスト。実大実験では、その通気効果が確認された。

 軒先で煙幕花火に火をつけてしばらくたつと、屋根ふき材の瓦の重ね代から煙が大量に出てきた。屋根断熱の新工法の通気性能を、試験棟で披露したときの様子だ〔写真12〕。

〔写真1〕瓦下の通気性能を煙で確認
〔写真1〕瓦下の通気性能を煙で確認
野地板の外側にある瓦下の通気性能を確認するため、実大の試験棟の軒先で煙幕花火に火をつけて、煙の出方を実験した様子。煙は瓦の重ね代から大量に出てきた(写真:日経アーキテクチュア)
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〔写真2〕試験棟でMDFと合板の差を検証
〔写真2〕試験棟でMDFと合板の差を検証
実大実験で使用した試験棟。延べ面積は1.5坪(写真:神清)
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試験棟の野地板。西側半分は新工法で用いるMDF、東側半分は合板を施工した(写真:神清)
試験棟の野地板。西側半分は新工法で用いるMDF、東側半分は合板を施工した(写真:神清)
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 新工法を開発したのは、瓦の製造と屋根の結露調査などを手掛ける神清(愛知県半田市)。一般的な屋根断熱工法と異なり、瓦下の“隙間”を通気層として活用するのが特徴だ。野地板に湿気を通しやすいMDF、防水シートに透湿ルーフィングを採用。野地板と断熱材の間の通気層をなくした。室内の湿気を野地板と防水シートを通して、瓦下の隙間から抜く仕組みだ。

 「野地板の“外側”に通気層を設けるという逆転の発想で新工法を開発した。屋根断熱工法の様々な弱点をなくすことができる」と、神清の神谷昭範常務は説明する。

在来工法よりも材料費が安い

 屋根勾配に沿って断熱材を配する屋根断熱。近年採用する住宅が増えている一方で、通気不良で野地板に結露やカビが発生するトラブルが目立ってきた〔図1〕。屋根断熱では野地板と断熱材の間に通気層を設けるのが一般的だが、隅々まで空気が通るように施工するのは難しく、手間がかかる。適切に施工しても野地板の外側が乾きにくい弱点があり、劣化を早める恐れもあった。

〔図1〕屋根断熱が10年間で16ポイント増加
〔図1〕屋根断熱が10年間で16ポイント増加
住宅金融支援機構が実施した「フラット35住宅仕様実態調査」の結果。屋根断熱の2017年度の採用率は37.4%で、07年度から16.4ポイント増加した(資料:住宅金融支援機構の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 新工法のメリットは、施工性の良さと安価なコストだ。野地板と断熱材の間に設ける通気層が不要なので、施工性が格段に良くなる〔図2〕。割高なMDFを採用したことによる増額分も吸収できる。試算では、面積が100m2の切妻屋根の場合、材料費が従来工法より7万6300円安くできた。「特別な措置を施さなくても、瓦下にはおのずと隙間ができる。MDFと瓦の組み合わせだからこそ、コストメリットが得られると分かった」と神谷常務は話す。

〔図2〕瓦下に厚さ最大64mmの隙間
〔図2〕瓦下に厚さ最大64mmの隙間
図は、試験棟に施工した新工法の仕様。野地板の室内側には通気層を設けない。瓦で多く採用されているF形フルフラットタイプだと、工法を問わず瓦下に厚さが最大64mmの隙間ができる
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透湿ルーフィングと桟木を施工中の試験棟(写真:神清)
透湿ルーフィングと桟木を施工中の試験棟(写真:神清)
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