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竹中工務店が金属3Dプリンターを建築プロジェクトに適用しようと、研究開発を進めている。デジタルとリアルをじかに結ぶ新技術によって、建築デザインの可能性を、施工の制約から解き放つ試みだ。

 産業用ロボットアームの先端に溶接トーチを取り付け、市販の溶接ワイヤを供給しながら肉盛溶接を繰り返し、金属の構造物を「印刷」していく──。竹中工務店は金属3Dプリンターを開発しているオランダ・アムステルダムのスタートアップ企業、MX3Dとタッグを組み、大空間建築物の「接合部」を試作〔写真1、2図1〕。実プロジェクトに適用しようと、研究開発を進めている。

〔写真1〕産業用ロボットアームで接合部を「印刷」
〔写真1〕産業用ロボットアームで接合部を「印刷」
MX3Dが開発した金属3Dプリンターで接合部を印刷する様子。下から上に向かって盛っていくので、張り出し部の印刷が難しい(写真:竹中工務店、MX3D)
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〔写真2〕表面には肉盛溶接の痕跡が残る
〔写真2〕表面には肉盛溶接の痕跡が残る
金属3Dプリンターで印刷した接合部。表面には肉盛溶接の痕跡が残っている。内部にはモルタルを充填した(写真:竹中工務店、MX3D)
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〔図1〕大空間建築物の接合部を想定した
〔図1〕大空間建築物の接合部を想定した
3Dプリンターで製作した接合部の適用イメージ。大空間建築物の接合部を想定している(資料:竹中工務店、MX3D)
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 金属3Dプリンターで試作した接合部の重量は約40kg、高さは約500mm。試作品なので、実際の建築物に使用する接合部に比べるとやや小ぶりだ。より大きな接合部を製作する場面を想定し、内部を中空としてモルタルを充填する複合構造を採用した。溶接量をなるべく減らし、印刷に要する時間とコストを削減する狙いがある。

 溶接ワイヤには、優れた構造強度と耐食性を持つ二相ステンレス鋼向けの製品を使用した。今回は欧州の規格に適合した製品を用いたが、日本産業規格(JIS)のワイヤを用いることも可能だ。

 MX3Dの3Dプリンティング技術はWAAM(Wire and Arc Additive Manufacturingの略、ワイヤとアーク溶接を用いた金属積層造形技術)などと呼ばれ、金属粉末にレーザービームを照射して固めるSLM(Selective Laser Melting)という手法と比べて材料の単価が非常に安く、印刷速度も優れる。

 表面の凹凸が目立つのが難点だが、建築や土木などの大型構造物を印刷するのに向いている。

 同社は2018年3月、3Dプリンターで印刷した長さ12.5mの鋼橋を発表して話題を呼んだ〔写真3〕。曲線を多く取り入れたデザインが特徴のこの橋は、アムステルダムの運河に架ける予定の歩道橋。総重量約4.5tの鋼材を、4台のロボットを用いて6カ月かけて製作した。デザインはオランダのヨリス・ラーマン・ラボが、構造は英アラップが担当した。

〔写真3〕MX3Dが3Dプリンターで印刷した鋼橋
〔写真3〕MX3Dが3Dプリンターで印刷した鋼橋
MX3Dの名声を高めたのが、金属3Dプリンターで印刷した鋼橋。長さ12.5mの歩道橋だ(写真:MX3D)
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