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省人化だけで終わらせるな

 3Dプリンターの技術は、ロボティクスや材料、建設など、複数の分野にまたがる。海外では異分野の研究者や企業が連携して先進的な技術に取り組み、それに政府が出資しているケースが多い。

 一方、日本は研究予算の規模や政府からの支援が圧倒的に少ないのが実情だ。厳しい環境ではあるが、国内でも3Dプリンターに関しては分野横断で議論を進める必要性を感じている。

 3Dプリンティングが生産性向上やデジタル化に貢献する技術であるのは間違いない。人手を介さなくても、一定の品質のものを高い再現度で手に入れられるようになることへの期待は大きい。

 しかし、国内で技術開発に取り組む建設会社の動向を見ていると、今後5~10年の目標設定に難航している状況だ。建築基準法の縛りが強く、品質水準も高いので、ニーズを見極めにくいのだろう。

 だが、革新的な技術が生まれるときは、必ずしもニーズが先行するわけではない。例えば、米アップルの「iPhone」は消費者のニーズに応えてできたものではない。ニーズを新たに生み出して、大ヒット商品になったと言われる。

 建設用3Dプリンターも、今までにない構造の可能性を切り開くなど、新たな価値を提供するポテンシャルがある。人による作業の置き換えだけではもったいない。

 まずは、課題解決型の技術開発に切り替える必要があるだろう。「できそうだから」という理由で技術開発を進め、後から応用先を探すのでは発展しない。世の中にある課題を先に見つけ、技術の難題を打破していく姿勢が重要だ。(談)

石田 哲也氏
東京大学大学院工学系研究科教授
石田 哲也氏 いしだ てつや:1999年に東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻で博士課程を修了。2013年から現職。19年より日本コンクリート工学会で3Dプリンティングの活用に関する委員会の委員長を務める
設計思想を抜本的に変え、自然との融合を

 建設用3Dプリンターの技術を発展させるには、設計の発想を根本から変える必要がある。特に、今まで触れられなかった内部構造をどのように設計していくかがポイントになるだろう。

 設計事務所などが一般的に使っている従来のCADソフトは、基本的にはサーフェス(面)の組み合わせで構造物を形づくる。一方、3Dプリンターは材料を「点」や「線」の形で重ねて造形していくという点で大きく異なる。そのため、従来のCADで描いた設計では、思うように造形できないケースがある。

 3Dプリンターでつくれるデザインの幅を広げるには、積層でつくることを前提に設計を組み立てる必要がある。こうしたデザインの手法はDfAM(Design for Additive Manufacturingの略)と呼ばれる。DfAMに対応した設計や構造計算のソフトウエアを整備していくと同時に、新しい発想で設計できる人材の育成も進めていかなければならない。

 研究室では現在、3Dプリンターでつくれるデザインの体系化を進めている。内部構造を含むデザインの最適化を極めると、自然界の造形に近づく傾向があると分かってきた。土木や建築においても、周囲の環境や生態系と親和性の高いデザインなどが、構造物の新たな価値として認められる可能性があるのではないか。

 さらに、3Dプリンターは建設業における複合材料の可能性も広げるだろう。繊維とコンクリートなど、既に実用化されている材料の組み合わせでも、それぞれの最適な配置を設計段階から考えられるようになったら面白い。(談)

田中 浩也氏
慶応大学環境情報学部教授
田中 浩也氏 たなか ひろや:2003年に東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻で博士課程を修了。12年に慶応大学SFC研究所「ソーシャルファブリケーションラボ」を設立し、代表に就任。16年から現職
この記事は、日経コンストラクション2019年7月8日号特集「設計・施工を刷新する建設3Dプリンター」の一部を再構成した。