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京都市は、中心部の小学校の跡地で、民間事業者による有効利用を進めている。その先陣となるホテルが2件オープンした。いずれも既存校舎は地域のシンボルだ。貴重な近代建築をホテルの特徴や魅力に生かしている。

立誠ガーデン ヒューリック京都(京都市中京区)
地域活動と共存するホテルの在り方示す

繁華街の四条河原町の近くにある元立誠小学校の跡地を、ホテルを中心とする複合施設に転用。地元住民の要望に応えて既存校舎をできるだけ残しつつ、敷地内での高さ制限の違いを生かして増築棟を配した。

 「立誠ガーデン ヒューリック京都」は、「ザ・ゲートホテル京都高瀬川」を中心とする複合施設だ。1993年に閉校した立誠小学校の旧校舎は、京都市内に現存する鉄筋コンクリート造の校舎では最も古い。その既存校舎の裏手を解体し、高瀬川から離れた敷地の西側に8階建ての別棟を増築。また、敷地を囲っていた塀を取り払い、旧グラウンドを広場として開放している〔写真1~3〕。

〔写真1〕「残す」「開ける」「建てる」をバランスよく
〔写真1〕「残す」「開ける」「建てる」をバランスよく
南東から見た全景。右側の3階建てが校舎だった既存棟。敷地の高瀬川側は高さ制限が15mだが、増築棟部分で31mに変わる。最上階はデザインを変え、1層分低く見えるようにした。増築棟は鉄骨造だが、外壁には既存棟と同じような凹凸を付けている(写真:古川 泰造)
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〔写真2〕回廊を設置して広場の領域性を確保
〔写真2〕回廊を設置して広場の領域性を確保
回廊の庇は日よけの役割とともに、「高瀬川沿いの景色と、敷地奥の高さ31mの建物が林立する河原町通の景色を徐々につなげることを意図した」と竹中工務店大阪本店設計部の中村圭祐氏(写真:古川 泰造)
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〔写真3〕ロマネスク様式の外観は保存
改修前の既存棟(写真:古川 泰造)
改修前の既存棟(写真:古川 泰造)
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(写真:古川 泰造)
(写真:古川 泰造)
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既存棟は1928年の竣工で、立面にはロマネスク様式の意匠が施されている。メインエントランスには高瀬川に架かる正面橋を渡って入る。高瀬川は角倉了以が私財を投じて開削した運河で、エントランス前に立っていた記念碑は保存

 この学校跡地の活用事業者であるヒューリックは、2016~17年のプロポーザルで13社から選ばれ、市と60年間、年額約1億5592万円の賃料で定期借地権設定契約を結んだ。同社開発事業第二部副部長の長根潤氏は、「当社は京都に観光アセットがなかった。ここは繁華街に近い一方、高瀬川沿いで憩いの雰囲気もあり、立地が良い。学校だった歴史も面白い」と応募の理由を語る。