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その空間は平滑な面とベーシックな素材で構成され、3次元曲面も新素材も使われていない。それでも、訪れた者の胸を深く、確実に刺激する。建築家の“正道”ともいえるその姿勢は、時代遅れなのか、変化が一巡して最先端なのか──。第三者の声を交えつつ、谷口吉生氏の本質を浮き彫りにする。

都内にある谷口建築設計研究所のオフィスでインタビューに答える谷口吉生氏。80代になっても明晰で、いつもダンディーだ(人物写真:稲垣 純也)
都内にある谷口建築設計研究所のオフィスでインタビューに答える谷口吉生氏。80代になっても明晰で、いつもダンディーだ(人物写真:稲垣 純也)
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 インタビュー嫌いの谷口吉生氏がこの企画に応じるに当たっては、1つの条件があった。「一問一答ではなく、メディアとしての視点を持って記事を構成する」というものだ。

 その根底には、谷口氏のこんな疑念がある。建築家が自分の言葉で自作を説明することにより、建築がどんどん一般の人から遠いものになっているのではないか──。

 3度にわたったインタビューは、一問一答スタイルであれば10ページでも20ページでも書ける幅広い内容だった。だが、本稿は谷口氏の提案を踏まえ、第三者の声を織り交ぜながら、「建築界が今、谷口氏の創作姿勢から学ぶべきこと」を考察する。