全4239文字
PR

名古屋の象徴といえる久屋大通公園の改修事業が完了し、9月にオープンした。求められたのは、歴史性や公園の機能を維持しつつ、にぎわいを生む場。公募設置管理制度(Park-PFI)活用では国内最大であり、今後の公園活用の試金石となる。名古屋テレビ塔も免震化して一部をホテルに転用。新たな一歩を踏み出した。

 子どもたちが芝生で遊び、カフェやショップは多くの人でにぎわう──。公募設置管理制度(Park-PFI)の活用事業として国内最大規模となる「Hisaya-odori Park(ヒサヤオオドオリパーク)」(名古屋市)が9月18日にオープンした。対象地は久屋大通公園のうち北エリア・テレビ塔エリアと呼ばれる部分。南北に延びる約900m、広さ約5万4000m2の規模だ〔写真1〕。24棟の商業施設が建ち、飲食や物販などの35店舗が入居する。

〔写真1〕ビルに囲まれた全長900mの公園
〔写真1〕ビルに囲まれた全長900mの公園
名古屋市の久屋大通公園を南東から見る。戦後復興事業で延焼防止のため若宮大通と久屋大通、2本の100m道路が整備され、当初は道路中央帯の緑地しかなかった。1954年にテレビ塔が完成した後、緑地が段階的に整備され、70年、都市公園法に基づく公園として供用開始となった。中央やや右に立つのが名古屋テレビ塔(写真:車田 保)
[画像のクリックで拡大表示]

建蔽率緩和と10年延長

 改修前の久屋大通公園は供用開始から40年以上が経過し、老朽化が進んでいた〔写真2〕。名古屋市住宅都市局都心まちづくり課の猪俣佳江・事業推進係長は、「維持管理を続けることが困難だった上、バリアフリー化も急務だった。再整備するには市の財政が厳しく、民間活用の方法を模索した」と振り返る。

〔写真2〕木が生い茂る薄暗い印象を払拭
〔写真2〕木が生い茂る薄暗い印象を払拭
改修前。木などが生い茂り、昼間でも薄暗い印象だった(写真:名古屋市)
[画像のクリックで拡大表示]
改修後。大径木は芝生の両脇に移植するなどして残した(写真:車田 保)
改修後。大径木は芝生の両脇に移植するなどして残した(写真:車田 保)
[画像のクリックで拡大表示]

 市は、2017年に都市公園法の改正で創設されたPark-PFI制度と、指定管理者制度を組み合わせることとした。Park-PFI制度では、民間事業者が公園施設の整備と、飲食や物販などの収益施設の整備・運営を担う。整備後の公園は市に譲渡する。公園の整備費は主に市が持ち、収益還元で事業者も一部負担する。

 これまで2%とされていた公園の建蔽率を最大10%上乗せでき、設置管理許可期間を最長10年から最長20年へと延ばせる特例がある。

 市は17年10月に民間事業者の公募を始め、三井不動産を代表とするチームを18年2月に選定した。指定管理者も三井不動産とし、公園と収益施設を一体的に運営・管理できる体制とした。

 公園設計は日建設計と大成建設、建築設計と施工は大成建設が担当。18年3月から設計を始め、19年1月に着工した。公園整備費は約30億円。事業期間は38年2月末までで、終了時期になると三井不動産が収益施設を解体する予定だ。